前回は、経営に大きなインパクトを与える事業用不動産の「出口戦略」について説明しました。今回は、事業用不動産の「出口戦略」の具体的な進め方を説明します。

まずは「負債と資産の洗い出し」から実行

出口戦略の実行には、流れに沿ってさまざまな作業が伴います。最低でも3か月の期間を要するので、かけられる時間をもとに工程表を作るとわかりやすくなります。

 

最初に行うのは「廃業の決断」です。周囲から反対意見が出ても心が揺らがないよう、「○月○日をもって事業を廃業するのだ」と定めます。

 

廃業を決めたら「負債と資産の洗い出し」を行います。経営不振が続くと複数の金融機関から借金を重ねている上、親戚など個人からの借入や決済できていない買掛金なども存在しており、負債は多方面に分散しています。それらをすべて洗い出し、さらに従業員に支払う退職金や未払い賃金などを加算したものが負債の合計額です。

 

資産には不動産の他に売掛金などの債権や在庫商品、事業用の設備などがあります。負債額から資産を引くことで、不動産売却によって返済しなければならない金額が見えてきます。

売却する事業用不動産の詳細を把握する

次に行うのは「不動産に関する情報の把握」です。普段事業用不動産として使っているにもかかわらず、二代目、三代目の経営者の場合には不動産の詳細を知らないことが珍しくありません。

 

面積や用途地域、境界、前面道路の幅など、売却に関わる情報を調べ直します。古くから利用している土地は境界がいい加減に決められていたり、測量が不正確で面積が実際とは異なる数字で登記されていたりしがちです。隣接する土地の所有者の立ち会いのもとで境界を確認し、新たに測量を行うことで、売却交渉の際にも使える資料を作ることができます。

 

工場の場合、土壌汚染などのリスクもあるので、不安があるときにはあらかじめ専門家に依頼して調査を済ませておくのが賢明です。工場以外でもガソリンスタンドや病院の跡地など、土壌汚染が問題になるケースは少なくありません。

 

物件の詳細が把握できたら、いよいよ「出口戦略の立案」です。多くの買主候補と面談する中で不動産をどのように売ればもっとも高値がつくかを把握して、戦略的に不動産を加工し売却します。

 

非常に大まかに解説すると、以上が経営者にとっての出口戦略の実行法です。

本連載は、2016年8月16日刊行の書籍『経営者のための事業用不動産「超高値」売却術』から抜粋したものです。その後の税制改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。

経営者のための 事業用不動産「超高値」売却術

経営者のための 事業用不動産「超高値」売却術

大澤 義幸

幻冬舎メディアコンサルティング

事業が悪化し経営苦に陥った中小企業経営者の切り札「不動産売却」。できるだけ高値で売却して多額の負債を返済したいと考えながらも、実際は買手の〝言い値″で手放せざるを得ないケースが多い。しかし、売れないと思っていた…

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