前回は、融資元の金融機関として「信用金庫」が信頼できる理由について説明しました。今回は、金融機関から融資を引き出すための「返済の根拠」の示し方を見ていきます。

抵当権を抹消させる、100点満点の交渉材料とは?

事業用地を売却する上で、ほとんどの経営者が大きな障害と認識しているのが金融機関の設定する「抵当権」です。経営者としては「抵当権」を外してもらわないと売買契約はできない一方、金融機関側は「返済が確定しなければ抵当権を外せない」と主張します。

 

この交渉をまとめるカギは「抵当権を抹消して不動産が売却できれば負債を完済できる」という売主側の主張について明確な証拠を示すことです。

 

物件そのものの客観的な価値が負債額を超えている場合には比較的簡単ですが、分割や加工によって価値を引き上げて負債額を上回ろうとするケースではいくつかの手順を踏む必要があります。不動産の開発計画や工程表を作成し、返済計画にリアリティを持たせ、「なるほど、これなら負債を返済できる」と思わせるだけの証拠を積み上げていくことが大切です。

 

分割して一部を先に切り売りすることで返済する計画なら、売買契約書と前金が獲得できていれば、抵当権の抹消にあたって100点満点の交渉材料です。前金の支払いが無理なら売買契約書だけでも確保しましょう。それも難しいケースでは、売買について合意した協定書があると金融機関を納得させやすくなります。

 

忘れてはいけないのは金融機関の担当者にも社内的な立場があるということです。売却が決定しており、価格が明確化されていないと抵当権抹消のための稟議書を書くことができません。傍証となるような資料をあれこれ提出しても非効率なので、「どういった計画により、いくらで売却できるのか」という計画の信憑性を示す本質的な資料をしっかり提出することを意識すべきです。

「リスケジュールした取引先には新規融資をしない」

事業用の不動産を高値で売却するためには、一定の資金を要することが少なくありません。呼び水となる資金がないと適切な加工や分割、あるいは建物の撤去などができないためです。ところが、経営に行き詰まった企業には余分なお金がないので、融資によって調達することになります。

 

事業において新たな資金が必要となった際には、古くから取引のある金融機関に依頼するのが一般的な商習慣ですが、不動産売却は例外です。不動産売却による負債の返済を計画する中では返済のリスケジュール交渉を行う必要があるためです。

 

日本の銀行では「リスケジュールした取引先には新規融資をしない」という商習慣があるので、旧知の取引金融機関に融資を依頼しても時間の無駄となる可能性があります。短時間で効率よく売却用の資金を得られるよう、新たな金融機関に融資を申し込みましょう。

 

前述の抵当権抹消の交渉と同じく、金融機関に融資を依頼する際には「返済できる確かな証拠」を示す必要があります。融資によって行う造成や解体、建物撤去の計画書、工程表などをしっかり整えて提出することで、新たな金融機関からの融資を実現するのです。

本連載は、2016年8月16日刊行の書籍『経営者のための事業用不動産「超高値」売却術』から抜粋したものです。その後の税制改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。

経営者のための 事業用不動産「超高値」売却術

経営者のための 事業用不動産「超高値」売却術

大澤 義幸

幻冬舎メディアコンサルティング

事業が悪化し経営苦に陥った中小企業経営者の切り札「不動産売却」。できるだけ高値で売却して多額の負債を返済したいと考えながらも、実際は買手の〝言い値″で手放せざるを得ないケースが多い。しかし、売れないと思っていた…

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