前回は、事業用不動産売却に大きく影響する「金融機関の思惑」について説明しました。今回は、融資元の金融機関として「信用金庫」が信頼できる理由を見ていきます。

取引先や親族、友人等からの融資は避けたほうが無難

金融機関は事業用不動産の売却においても大きな役割を占めるプレイヤーですが、事業を継続する中ではさらに大きな意味を持つ取引相手です。

 

資金の借り先としては大手の金融機関以外に、取引先や親族、友人、街金なども候補となります。ただし、そういった関係者からお金を借りていると、事業に対する外部からの信頼が低下しがちです。抵当権登記されている人物や組織は簡単に調べられるので、事業のイメージを守るためには金融機関以外からの融資は避けた方が無難と言えます。

 

金融機関には都市銀行、地方銀行、信用金庫、信用組合などがあり、それぞれ金利や営業の方針に違いがあります。一般的に意識されているのはサイズと金利の違いでしょう。

 

もっとも資本の大きい都市銀行が優良な事業に対して貸し付ける際の金利が1~2%であるのに対し、地方銀行なら2.5%程度、信用金庫なら2~3%、信用組合は3.5~5%程度とされています。

 

事業を行う上では金利が低いほど有利なので、多くの事業者は信用組合より信用金庫、地方銀行より都市銀行との取引を望む傾向があります。さらには都市銀行と付き合いがあると言うと、通りが良く、優越感を覚える事業者も少なくありません。

「貸すも仕事、貸さぬも仕事」が金融業の本来の姿

しかしながら、資金の融資を受ける先を単純に金利や「格」だけで選ぶのは危険です。

 

私の経験上、中小企業にとってもっとも信頼できる金融機関は信用金庫です。都市銀行は全国、地方銀行は主に県内が営業エリアなので、担当者がひんぱんに異動します。

 

たとえば、先行きが暗い経営者に対して「ここを乗り切ればまだまだいけますよ」などと安請け合いをしても、責任を問われることはまれです。

 

追加融資の悪影響が出るころには異動していることが多いため、資金繰りが悪化した経営者と顔を合わせずに済むのです。担当企業に対する愛着や責任感も希薄なので、自身や支店のノルマを第一に考える傾向があります。

 

信用金庫と信用組合は同じく規模が小さめで地元密着型ですが、信用組合は経営に対する専門的なノウハウを持っていることは少ないので、担保さえあれば事業内容を精査せずにどんどん融資を行うようであれば危険です。

 

「貸すも仕事、貸さぬも仕事」が金融業における本来の姿のはずです。地元密着で企業のことを本気で思い、担保割れでも貸し付けを行い、担保余力があっても融資をきちんと断る姿勢は、信用金庫が一番確かではないかというのが私の考えです。

本連載は、2016年8月16日刊行の書籍『経営者のための事業用不動産「超高値」売却術』から抜粋したものです。その後の税制改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。

経営者のための 事業用不動産「超高値」売却術

経営者のための 事業用不動産「超高値」売却術

大澤 義幸

幻冬舎メディアコンサルティング

事業が悪化し経営苦に陥った中小企業経営者の切り札「不動産売却」。できるだけ高値で売却して多額の負債を返済したいと考えながらも、実際は買手の〝言い値″で手放せざるを得ないケースが多い。しかし、売れないと思っていた…

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