「買い上がり」は売上のノルマを達成のため!?
不動産の価格は売買や賃貸を手がける事業者の動向によっても大きく動きます。代表的な例としてよく見られるのが「買い上がり」による相場の上昇です。
たとえばA社という事業者が年間720万円の賃料が上がる投資用不動産を収益率6%になるよう購入しようと考えると、購入希望価格は1億2000万円になります。ところが相場が上昇すると収益率について妥協しなければ購入できる物件がなくなってきます。
同じ物件を5・5%で購入するというB社が現れると、その購入希望価格は1億3091万円となるため、購入希望価格で負けてしまうのです。
そこでA社は収益率を5%に切り下げて購入希望価格を計算し直し、同じ収益物件に1億4400万円という価格をつけることとなります。これが「買い上がり」です。
不動産事業者にとって好ましい状況ではありませんが、利益率が低いとはいえ購入しなければ売上のノルマを達成できません。相場が上がっている中では赤字が出ないギリギリまで買い上がりが続くことがあります。
購入希望額を大きく「切り下げる」古典的な手法
事業者による不動産価格への影響で、もう一つよく見られるのが意図的な「買い下がり」です。「買い下がり」を行う買主は売主に対し、交渉の当初は高額の購入希望額を提示します。売主は「苦労なく高値で売れる」と安心するため、他の買主候補をつなぎ止めたり新たな買主候補を探したりしなくなります。
自分以外に買主候補がいなくなったところで、「買い下がり」を行う事業者が突然値下げ交渉を始めます。「購入について社内の稟議が下りなかった」「物件の○○について不備が見つかった」などの理由をつけて、購入希望額を大きく切り下げてくるのです。
売主に時間や経済的な余裕があれば、交渉を蹴って新たな買主探しを再開できますが、そうでない場合には交渉に応じざるを得ません。不動産事業者にとっては古典的な手法なので、売主は契約にいたる直前まで買主候補を複数キープしておき、A案がダメになったらB案に切り替えられるよう態勢を整えておくことが必要です。