著作権料が上昇している「音楽」
昨今は音楽の著作権料が上昇しており、アメリカにおける著作権の評価額は通常、著作権料収入の10~20倍と評価されています。
また、ストリーミング、ライセンシング、その他使用権の収入に対する最高税率が37%であるのに対し、売却の際の課税率は20%と低いです。
この背景には2006年のカントリーミュージック業界の働きかけがあります。結果、アメリカ議会は、自分で作詞作曲した音楽を売却する場合の課税率は20%にするという特別な課税条項を税法に追加しました。
バイデン政権による「富裕層課税」の影響があった
2021年当時、音楽著作権の売却が盛んに行われたのかというと、アメリカ大統領選挙の影響があります。当選したバイデン氏は富裕層への増税を図っていました。具体的には年収100万ドル以上の納税者にはキャピタルゲイン課税20%を廃止し、通常の所得税最高税率39.6%をかけることを検討していました。
このような富裕層課税の流れが、彼らの税金対策を突き動かしたものと思われます。
また、アメリカは日本と異なり、連邦税(国税)だけでなく州税(地方税)にも注意を払う必要があります。ボブ・ディランは長い間、カリフォルニア州の居住者でした。
カリフォルニア州の最高税率は13.3%と非常に高いです。現在、彼の住んでいる場所は不明ですが、他の富裕層と同様に、州税が低い(あるいはゼロ)州に引っ越している可能性もあります。
州税の高いカリフォルニア州に居住しながらできる対策
節税対策で高いコンサル料を払えば、カリフォルニア州に居住したままできる対策があります。
それは州税のないネバダ州等でIncomplete non-grantor trust というトラストを作成し、著作権を信託する方法です。ただし、この方法を使うためには高度な専門知識が必要なため、弁護士料も相当なものになります。
この方法を使うと、買い手にとっても法人である場合には税率21%で済むため節税になります。州税のない州や低税率国のシンガポールやルクセンブルクの会社が購入した場合はさらに効果的です。
また、購入した著作権料は10~15年で減価償却できるため、著作権料に対し節税効果が増す、ということで売り手と買い手の双方にとってメリットがあるといえます。
もっとも、高額なコンサル料がかかってしまうため、節税にもお金がかかってしまうのは、何とも皮肉な話です。
税理士法人奥村会計事務所 代表
奥村眞吾