気づかぬ間に「パスポート」失効…「アメリカ」に住むなら絶対に納税状況を“正確に”把握する必要があるワケ【税理士が解説】

気づかぬ間に「パスポート」失効…「アメリカ」に住むなら絶対に納税状況を“正確に”把握する必要があるワケ【税理士が解説】
(画像はイメージです/PIXTA)

税金は滞納しないにこしたことはありません。アメリカでは税金を滞納すると、とてつもないペナルティを受けることになってしまいます。最悪の場合、パスポートの失効し不法滞在の状況に陥ります。国際税務のプロフェッショナルが、詳しく解説します。

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強化されているIRSの取り締まり

IRS(米国内国歳入庁)はこのほど、2023年から2024年半ばまでに富裕層から約10億ドルの延滞した税金を回収したと発表しました。

 

IRSの発表によると、今回徴収の対象となったのは、年収100万ドル以上の人のうち5万ドル以上の税金を延滞している個人1,600人。そのうちの1,500人にIRSの徴収官を割り当てました。2024年春時点で、その回収した金額が10億ドルを突破しました。

一定の税金滞納でパスポートが失効…

IRSの富裕層に対する税務調査はここ数年、厳しさを増しています。たとえば、アメリカのパスポートを所有し、64,000ドル(インフレ調整により毎年変更あり)以上の税金を払っていない人は、パスポートの発行・更新が停止される、あるいは取り消すことが法制化されました。これは国務省と連携して実行されます。

 

IRSに税金債務基準額を超える納税者を深刻な税金延滞者として認定されると、そのまま国務省に報告されます。同時に、IRSは納税者に対し、90日間の猶予期間を与えたうえで、その間に支払いがない場合はパスポートの発行・更新の停止、あるいは取り消す旨を通知します。

 

もしこの間に税金が全額支払われる、あるいは一部を支払うことによって債務基準額を下回る、あるいは時効により回収ができない場合にはIRSは国務省に報告し、執行の停止を依頼します。

通知書が届かないことが十分にあり得る

この90日間の間に支払えない場合は本当に大変なことになるわけですので、通知が届いたら直ちに対応した方がいいでしょう。ところが、実はこのプロセスにおいて、日本では考えられないようなトラブルが発生することがあります。

 

それは、IRSからの通知書が「届かない」ことがありうるということです。そんな重要な通知書が届かないことがあるのが、アメリカの郵便事情です。実際、通知書が届かなかった結果、パスポートが取り消され、訴訟になったケースはあります。しかし、残念ながら通知書が届かなかったことを言い訳にできないとして、裁判所に訴えを退けられるのが常です。基本的には納税者が負けます。

 

さて、このような問題を踏まえたうえで、もう一つ信じがたい状況に陥る可能性があります。この納税者が海外にいる場合です。

 

海外にいるアメリカ人の場合、深刻な事態を招きかねないです。ただでさえ、郵便が届くまでに時間がかかります。そのうえ、届かないこともあり得るわけです。気づいたらパスポートが失効していることになりかねません。そうなってしまえば不法滞在です。アメリカに戻らないといけないなど、厄介なことになってしまいます。

 

そのため、アメリカの納税者は常に自身の納税状況を気にする必要があります。もし何かの間違いで通知書が届くような事態になったとしても、間違いなく届くように確認しておく必要があるでしょう。

 

そして、もし通知書が来てしまったら、専門家に相談し早急に是正しましょう。デッドラインを迎えてしまったらもう手遅れです。

 

予算の増強でよくなることが見込まれるとはいえ、まだまだ問題の多いIRS。しかし、それでも国家機関であることには間違いありません。面倒くさがったりなめていたりしては本当に大変なことになります。

 

日本と同じ感覚でいると、とんでもない目に遭うかもしれません。

 

税理士法人奥村会計事務所 代表

奥村眞吾

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