アメリカの超富裕層が役員報酬を受け取らないワケ
故ジョブズは年棒1ドル、その他ビル・ゲイツ、マーク・ザッカー
日本でいうところの給与に対しては、アメリカでも総合課税で、地方税を含めると最高50%近くになります。ですが、キャピタルゲインや配当の税率は10数%のみです。
しかし、日本ではそうはいきません。
かつては個人の配当所得は20%の分離課税のみで完結しました。1億円の配当があっても、税金は20%で手取りは8,000万円あったのです。
その後、これが「金持ち優遇税制」と批判を受け、オーナーは20%の源泉ですむことなく総合課税へ変更されました。つまり給与などと合算されるので、今では配当収入も最高55%の税率です。
3%の株を持っているとその企業の「所有者」に
日本では、オーナーかどうかは持ち株比率で区別しています。その会社の総発行株数の3%を超えて所有しているかどうかで決めているのです。数パーセント所有していると完全なオーナー、実質的な所有者とみなされます。
国際的にみてもそれはないでしょうが、日本の富裕層の反発もなく、すんなり法案は可決しました。
昔は経団連などが反発していました。今の経団連のほとんどがサラリーマンの経営者です。
そうなると、オーナー一族は細かい対策に乗り出しました。
まず資産保有会社を作って、その会社に株を持たせました。その会社が受け取る配当は益金不算入にして、実質的な課税をゼロにしました。個人の保有比率を3%未満に抑えました。保有比率を2.9%などとして防衛を図り、配当金課税を20%に抑えたのです。
ところがその後、また税制改正が行われ、令和5年10月1日以後に受け取る配当について、オーナーの同族会社(資産管理会社)を通じて保有する分と合算して持ち株割合が3%以上かどうかを判定するとした法律になりました。
そうなると、オーナー経営者が2.9%、資産管理会社が10%ではアウト。さらにいえば、奥さんが2%、長男が1%でも家族全員が引っかかります。中学生の孫が0.5%だとしても配当は会社と合わせて3%以上ですので、たとえ100万円の配当も総合課税となるのです。
ここでおかしいのは、金額が基準ではないということです。持ち株比率のわずか3%での線引きとなっています。
鳩山由紀夫首相が母親から毎月1,500万円をもらっていた事件では、その原資はブリヂストンの配当からでした。年間数十億円の配当も3%未満であるので、20%の分離課税のみです。
欧米にはないこのような配当金特例課税に、ますます嫌気がさす富裕層。外国の優秀な人材は日本に来ません。わずかな税収で世間受けを狙う、情けない国であるといえます。
税理士法人奥村会計事務所 代表
奥村眞吾