映画『アンタッチャブル』にあった銃撃戦は米国IRS職員がやっていた!? 納税者に「銃」を向ける必要がある理由とは【税理士が解説】

映画『アンタッチャブル』にあった銃撃戦は米国IRS職員がやっていた!? 納税者に「銃」を向ける必要がある理由とは【税理士が解説】
(画像はイメージです/PIXTA)

バイデン大統領時代に施行されたインフレ抑制法により、IRS(米国内国歳入庁)には大幅な予算が投入されました。この資金は、ITシステムの強化や職員の雇用など、サービス向上に充てられたとされています。しかし、施行前から懸念されていたのが、「IRS職員の銃器携帯」に関する問題です。アメリカ国内でも賛否が分かれるこの問題について、国際税務の専門家が詳しく解説します。

インフレ抑制法でIRSが大幅に改善されたが…

2022年8月、インフレ抑制法(Inflation Reduction Act)が議会で承認され、当時のバイデン大統領が署名しました。この法律により、今後10年間で約7,400億ドルの歳入が生み出され、そのうち3,690億ドルが気候変動対策や代替エネルギー事業などに投資されることになりました。しかし、現在のトランプ政権の下で、この政策がどのように変化するか注視する必要があります。

 

この法律は、IRS(米国内国歳入庁)にも大きな影響を与えました。800億ドルがIRSに投資され、その大半は税務調査のための職員の増員やITシステムの強化に充てられました。これにより、チャットボットの導入などで窓口業務の改善が進み、今まで実施されていなかった税務調査が行われた結果、約10億ドルの税金が回収されました。

 

しかし、IRSへの予算増強に対しては懸念の声も上がりました。反対派の共和党議員は、「善良な納税者」や中小企業に対する監査が厳しくなり、負担が増すのではないかと指摘しています。特に、増額された予算が銃器や弾薬の購入に使われる可能性があるという主張もありました。

アル・カポネ逮捕に税務職員が貢献

IRSと銃器の関係は決して無視できません。Forbes誌によると、政府監査院(GAO)の報告で、IRSが4,487丁の銃と506万2,006発の弾薬を保有していることが明らかになっています。これは、IRSに日本の税務署にはない犯罪捜査部門(Criminal Investigation Division, CID)が存在するためです。一部の職員には銃の携帯が認められています。

 

IRSの武装職員が活躍した歴史的事例の一つが、シカゴのギャングのボス、アル・カポネの逮捕です。

 

カポネは脱税の罪で逮捕されましたが、その捜査にIRSが大きく貢献しました。この出来事は映画『アンタッチャブル』でも描かれています。当時、インテリジェンス・ユニット(現在のCIDの前身)の初代ユニット長に指名されたエルマー・リンカーン・アイリーらは、カポネをはじめとする犯罪組織の幹部を次々と逮捕しました。彼らは帳簿や銀行記録の分析だけでなく、潜入捜査などの危険な手法も駆使していました。

税務職員が「銃を携帯」する必要性は増している

現在でも、CIDの職員は危険な環境に身を置いています。麻薬密売人、テロリスト、資金洗浄を行う犯罪組織などを相手にするため、銃の携帯は必要不可欠な装備とされています。アメリカでは税務職員が襲撃される事例もあり、万が一に備える必要があるのです。

 

その一方で、増強された予算が過剰な武装化につながるのではないかという懸念も根強くあります。「なぜ税金の徴収に銃が必要なのか」と疑問視する声もあり、特に中小企業や一般市民に対する過度な取り締まりを危惧する意見も少なくありません。

 

日本では税務職員が武装することは考えられませんが、アメリカでは税務調査が命の危険を伴う場合もあるのが現実です。結局のところ、適切な税務手続きを行い、問題を未然に防ぐことが、平和な日常を守るための最善策であることに変わりはありません。

 

税理士法人奥村会計事務所 代表

奥村眞吾

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