2月は「トランプ関税」と「米国発リスクオフ」に注目
以上のように考えると、2月さらに米ドル安・円高に向かうか、それとも米ドル高・円安が再燃するかの第1のカギは「日米金利差」です。トランプ大統領の関税政策がこの金利差を左右するということになりそうです。
筆者は、「トランプ関税」のリスクを織り込む取引はすでにかなり広がり、むしろ“行き過ぎ”の懸念があり、その修正を余儀なくされているというのが実態であると考えます。
「トランプ関税」リスクを織り込む取引の代表格の1つが、米金利上昇を前提とした米ドル買いです。米トランプ大統領は、就任前から「カナダからの輸入関税を25%に引き上げる」と述べてきました。
CFTC(米商品先物取引委員会)統計の投機筋の米ドル・ポジション(円、ユーロ、英ポンド、スイスフラン、加ドルの主要5通貨で試算)は買い越しが一時過去最高レベルに拡大(図表4参照)。この米ドル買い越しの半分以上が、加ドルの売り越しです。加ドル売り越しは、この数ヵ月、過去最高規模の状況が続きました(図表5参照)。これはまさに、「トランプ関税」関連取引の“行き過ぎ”懸念を示すものです。
以上のように考えると、「トランプ関税」の動向は別にして、「トランプ関税」の“リスク”(米金利上昇やそれにともなう米ドル高)を織り込む取引がさらに拡大する余地はすでに限られており、修正が入る余地が大きいでしょう。
今後しばらくは「トランプ関税」関連取引の“修正”、つまり米金利低下、米ドル下落が続くと考えます。
「Deep Seekショック」によるリスクオフ拡大に注意
1月に浮上した動きでもう1つ気になるのが、ナスダック指数などの株価の急落です。これは、中国のスタートアップ企業、Deep SeekのAIモデルが米欧企業の優位性を崩すことへの懸念がきっかけとなりました。
「AIモデルの米欧企業の優位性」を示すとみられる指標の1つに、ナスダック指数とNYダウの相対株価があります。ダウに対するナスダックの割高は、2000年のITバブルなみに拡大しました(図表6参照)。
この指標が示すように、「AIモデルの米欧企業の優位性」が“バブル化”しているなら、今回の「Deep Seekショック」がその修正のきっかけとなり株安、リスクオフが拡大する可能性に一応の注意が必要です。
「トランプ関税」取引をはじめとしたいわゆる「トランプ・トレード」は、基本的にリスク資産の株などを買い、安全資産の債券などを売るリスクオン取引です。したがって、仮に株安となりリスクオフ拡大となれば、トランプ・トレードの修正が大きく広がる可能性もあるでしょう。
以上を踏まえると、筆者は2月も前月に続いて米ドル高・円安は限られ、「トランプ関税」関連取引の修正しだいでは米ドル安・円高が拡大する可能性もあると思います。それを踏まえたうえで、2月の米ドル/円は152~158円と予想します。
米ドル安の流れ継続か…今週の予想レンジは「153~157円」
2月第1週は、雇用統計やISM(米供給管理協会)指数など注目度の高い米経済指標の発表が多く予定されています。また、関税政策を中心にトランプ大統領の発言に引き続き注目が集まりそうです。
米ドル/円は日足、週足チャートとも、上値の切り下がる展開が続いてきました。この流れが今週も続くなら、156円を超えるのも厳しく、153円台のこの間の下値をさらに広げていくことになるでしょう。
市場展開のカギを握るのは、上述の米経済指標や「トランプ関税」を巡る動きを受けた米金利低下、日米金利差の米ドル優位縮小です。
筆者は米金利低下、米ドル安・円高といったこの間の流れが基本的に先週と変わらないという考えから、今週の米ドル/円予想レンジは「153~157円」とします。
吉田 恒
マネックス証券
チーフ・FXコンサルタント兼マネックス・ユニバーシティFX学長
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