弁護士からのアドバイス
昭彦さんは、哲也さん、典子さん、和也さんの3人に仲よく相続してもらうため、遺言書を作成したにもかかわらず、きょうだい3人で争いになってしまいました。
特に、昭彦さんの事業の跡を継いだ和也さんは、事業を続けるために多額な借金を抱えることになってしまいました。
作成した遺言書が有効な遺言書と言えるためには、法律上の要件を満たす必要があります。その法律上の要件を満たしていない遺言書は、中身がしっかりとしたものであっても、有効な遺言書として扱われないものになってしまいます。
遺言書は、複数回作成されることもあり、最後に作成された遺言書が有効な遺言書として扱われますので、いつ遺言書が作成されたのかが重要になります。そのため、「吉日」という記載では、明確な日付を特定することができないため、判例上、無効な遺言書として扱われてしまいます。
では、昭彦さんは、どのようにすればよかったのでしょうか。
昭彦さんの場合は、相続の専門家に一度相談してみるべきでした。
今回直接的な問題となった「吉日」の記載については、相続の専門家に事前又は作成したあとにでも相談していれば、その遺言書は無効であるというアドバイスを受けることが可能でした。
また、今回、昭彦さんは、事業経営をしていましたが、法人化することなく、事業で利用していた不動産を個人名義で保有していました。そのため、事業で使用していた不動産や機材がそのまま遺産分割の対象になってしまいました。
事業を法人化し、不動産や機材を法人の保有財産としていれば、遺産分割の対象は株式になりました。株式の評価は、必ずしも会社が保有する財産の金額と同じになるものではないため、昭彦さんの生前に法人化していれば、相続税対策を行うことも検討できました。
また、今回の事案の場合は問題になりませんでしたが、遺言書が有効な場合であっても、遺留分(法定相続人に最低限保証された取得分)を侵害する内容になっている場合、せっかく作成した遺言書が争いの火種になってしまう可能性もありました。
実際の遺言書を作成する際は、上記文言以外にも、祭祀承継や遺言執行者についても規定したほうが相続人間のトラブルを避け、想いを相続人に引き継ぐことができます。より正確な遺言書の作成を検討する際は、弁護士等の専門家のサポートを得ることが、ご自身の意向が反映された遺言書の作成につながります。
三浦 裕和
弁護士
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