むしろ父さんを支えてきたのは俺なのに…3,000万円相続も「親のすねをかじってきた」56歳長男。86歳父の死で発覚した弟との「相続格差」に怒り心頭のワケ【弁護士の助言】

むしろ父さんを支えてきたのは俺なのに…3,000万円相続も「親のすねをかじってきた」56歳長男。86歳父の死で発覚した弟との「相続格差」に怒り心頭のワケ【弁護士の助言】

遺言書は相続トラブルを防ぐ手段の一つですが、遺産の分配をめぐる家族の話し合いがうまくいかないと、かえって関係が悪化することもあります。特に、親が一方的な考えで遺言を残すと、兄弟間で深刻な争いが生じることがあります。本記事では、実際に遺言書の内容をめぐり兄弟が対立してしまった事例をもとに、遺言書作成時に気をつけるべきポイントについて、三浦裕和弁護士が詳しく解説します。

8050問題を抱えた父と長男、順風満帆な次男

 「私がいなくなったあと、息子たちはどうなるのだろうか」85歳の俊夫さんは最近、そんなことをよく考えるようになりました。

 

俊夫さんには、55歳になる長男の茂雄さんと、48歳の次男の二朗さんという二人の息子がいます。妻と離婚して以来、俊夫さんは茂雄さんと2人で暮らしていますが、茂雄さんは定職に就かず、ずっと実家で独身生活を続けています。現在も生活費の大半を俊夫さんが負担しています。

 

一方、次男の二朗さんは13年前に結婚し、今は別居して二人の子どもを育てています。年に一度は孫の顔を見せに来る二朗さん一家を見ていると、俊夫さんは自然と笑顔になります。

 

だからこそ、俊夫さんは悩んでいます。自分が残す遺産は、いま生活を支えている茂雄さんに多くを渡すべきなのか、それともこれから教育費など出費がかさむであろう二朗さん一家に残すべきなのか……。

 

遺言書の作成

俊夫さんは遺言書を作成するにあたり、まず自分の財産を確認しました。俊夫さんの財産は、実家の不動産と預貯金と株式。不動産が現在いくらくらいの価値があるかを知るため、ポストに入っていた〇×不動産に、「いくらで売れるか?」という査定を依頼しました。翌日、〇×不動産からは、2,500万円という査定結果が届きました。

 

次に預貯金と株式を調査すると、預貯金は4,000万円ほど、株式は3,500万円ほどあることがわかりました。

 

俊夫さんは、自分の財産を考えた末、茂雄さんに自宅に加えて500万円を渡せば、当面の生活資金と仕事を始める資金になって、問題ないだろうと考えました。さらに俊夫さんはネットで「遺留分を侵害する遺言書は争いの原因になる」という内容の記事を読んでいたため、遺留分を侵害しないよう注意して、次のような遺言書を書きました。

 

「不動産と金500万円は長男茂雄が取得し、それ以外の金融資産は次男二朗が取得すること。茂雄は定職にも就かず、長年親のすねをかじってきた。教育費などの負担が多い二朗の家庭と比べ、自宅があれば困ることはないだろう。自立のための支度金として500万円を残すので、この先は自分で何とか頑張ってほしい』

 

この内容であれば、茂雄さんが取得するのは、自宅2,500万円と現金500万円で合計3,000万円、二朗さんが取得するのは預貯金3,500万円と株式3,500万円で7,000万円。俊夫さんは遺留分を侵害しないバランスが取れた内容に加え、長男にも激励の言葉を残した良い遺言書を作成することができたと思い、満足して遺言書に封をして、机の中にしまいました。

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