同居すれば相続の際に節税になるが…65歳夫が〈財産2億円・90歳一人暮らしの母〉との同居を諦めた「妻の一声」とは?【相続の専門家が解説】

同居すれば相続の際に節税になるが…65歳夫が〈財産2億円・90歳一人暮らしの母〉との同居を諦めた「妻の一声」とは?【相続の専門家が解説】
(※写真はイメージです/PIXTA)

65歳の慶介は90代になった母親の相続を見越し、最も効果的な相続対策を考えていました。男性は妻に、節税実現のために生活スタイルの大転換を求めましたが、妻から一蹴されてしまいます。いったいどうしたらよいのでしょうか。相続実務士である曽根惠子氏(株式会社夢相続代表取締役)が事例をまじえて、相続税の節税について解説します。

90代、1人暮らしの母親、不安が出てきた

慶介さん(65歳男性)の母親は父親が亡くなってからは1人暮らしをしてきました。

 

母親は今年90歳になるので、いろいろと不安なことが出てきたといいます。子供は2人で、長男の慶介さんと妹の和歌子さん(57歳)ですが、2人とも同居はしておらず、それぞれ自分たちの家を取得して生活しています。

 

これからの母親の相続のときに困らないように、いまからできる対策をしておきたいと慶介さんご夫婦が相談に来られました。

自分たちだけでは方向性を決められない

母親の財産は100坪の自宅9,000万円とアパート3,000万円と金融資産8,000万円、合わせて2億円になります。

 

最近、たまたま慶介さんの家の近くで中古住宅が売りに出されたことから、家を建てて母親と同居すれば、互いに安心で、節税にもなっていいのではと思いつきました。自分ではいい案だと妻(59歳)に話をしたところ、「あなたは何もわかってないのね」と話し始めました。

 

妻によると、むしろ別居でこれまでいい距離を保っていたからこそ、世間でいう「嫁姑問題」とは無縁だったとのこと。そして妻は、少々認知機能に不安が出始めている母親はむしろホームに入ってもらったほうがよいのでは? という考えでした。妻の言い分に納得した慶介さんですが、自分たちだけでは方向性が決まりそうにないのでアドバイスが欲しいとのことでした。

小規模宅地等の特例はどこで使えば?

慶介さんは父親の相続の際に、母親が相続したので、自宅の小規模宅地等の特例が使えて効果的だったことから、同居しておくことが節税になると知っていました。

 

よって、元気なうちは別世帯でいいが、そろそろ同居しておかなければという思いがあり、近くの中古住宅が売りに出されたタイミングを活かしたいと思ったようです。

 

また、小規模宅地等の特例を使えば節税になるので、果たしてどこで使うことが節税になるのか、あらためて確認しておきたいということもありました。

節税のためにストレスを抱えるのは、お勧めできない

居住用の特例は同居する相続人がいれば、330㎡まで80%減額でき、確実な節税となりますが、それには「同居」か「家を持たない」か、など要件があります。

 

いつ相続になるかわかりません。いままで自分たちのペースで生活してきた大人が、同居するとなると、どんな気が合った者同士でもストレスになるのは当然でしょう。

 

いくら数字上、相続税の節税になるといっても、お互いにストレスを抱えての生活では、何年もの間、日常生活でストレスを抱えることになるのでは、お勧めできないところ。

節税の方法はいくつかある

いままでの自分たちの生活のリズムを大切にし、快適な毎日を過ごすためには、同居で節税するのではなく、金融資産で不動産対策をして、貸付用の特例を適用する方法があります。

 

また、母親にはケアつきの高齢者住宅に住み替えてもらい、自宅は賃貸住宅に建替える方法も検討できます。

 

慶介さんご夫婦は、いくつかの方法があることを知って、ほっとされたようで、「相続プラン」の委託を頂き、提案するなかから選択してもらうことになりました。

 

 

曽根 惠子
株式会社夢相続代表取締役
公認不動産コンサルティングマスター
相続対策専門士

 

◆相続対策専門士とは?◆

公益財団法人 不動産流通推進センター(旧 不動産流通近代化センター、retpc.jp)認定資格。国土交通大臣の登録を受け、不動産コンサルティングを円滑に行うために必要な知識及び技能に関する試験に合格し、宅建取引士・不動産鑑定士・一級建築士の資格を有する者が「公認 不動産コンサルティングマスター」と認定され、そのなかから相続に関する専門コースを修了したものが「相続対策専門士」として認定されます。相続対策専門士は、顧客のニーズを把握し、ワンストップで解決に導くための提案を行います。なお、資格は1年ごとの更新制で、業務を通じて更新要件を満たす必要があります。

 

「相続対策専門士」は問題解決の窓口となり、弁護士、税理士の業務につなげていく役割であり、業法に抵触する職務を担当することはありません。

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