遺された財産に預金がなく、不動産のみをきょうだいで分けるしかない場合もあるでしょう。しかし、その不動産に現在も誰かが居住していたら、どのように分割すれば良いのでしょうか? 本記事では、相続実務士である曽根惠子氏(株式会社夢相続代表取締役)が事例をまじえて、現在も居住している住宅を売却して遺産分割に充てる場合について解説します。
母親が亡くなって1年半
八重子さん(59歳・女性)が相談に来られました。母親が亡くなって1年半経つのに、まだ遺産分割ができていないというのです。父親は八重子さんが幼いころに離婚。母親は働きながら八重子さんをはじめ、弟、妹の3人を育ててくれました。幸い、祖父母の家に同居してきましたので、祖父から相続した30坪の自宅が母親の財産として残りました。
八重子さんと妹は結婚して実家を離れましたが、55歳の弟が独身のまま、ずっと母親と二人暮らしをしてきたのです。弟は母親と暮らしていたときから2階の自室に閉じこもり、八重子さんや妹とも滅多に顔を合わせることはできませんでした。
一周忌が過ぎた
母親の一周忌も過ぎたころ、そろそろ財産の分け方を決めようときょうだいで話し合いの場を設けました。話し合いには弟も渋々参加しました。しかし、弟が言うには母親の預金はほとんど残っていないと言うのです。そういうことであれば、唯一の財産である家を売却して分けるしかないという話になり、おおむね、3人ともそうするしかないと合意をしています。
しかし、弟が「すぐには出られない」「売ったら住むところがなくなる」「俺、行くところない」などと言い出し、再び2階の自室に閉じこもってしまいました。頭を抱えた八重子さんはどうしたらいいかと相談に来られました。
株式会社夢相続代表取締役
公認不動産コンサルティングマスター
相続対策専門士
相続実務士®
株式会社夢相続 代表取締役
一般社団法人相続実務協会 代表理事
一般社団法人首都圏不動産共創協会 理事
一般社団法人不動産女性塾 理事
京都府立大学女子短期大学卒。PHP研究所勤務後、1987年に不動産コンサルティング会社を創業。土地活用提案、賃貸管理業務を行う中で相続対策事業を開始。2001年に相続対策の専門会社として夢相続を分社。相続実務士の創始者として1万4400件の相続相談に対処。弁護士、税理士、司法書士、不動産鑑定士など相続に関わる専門家と提携し、感情面、経済面、収益面に配慮した「オーダーメード相続」を提案、サポートしている。
著書86冊累計81万部、TV・ラジオ出演358回、新聞・雑誌掲載1092回、セミナー登壇677回を数える。著書に、『図解でわかる 相続発生後でも間に合う完全節税マニュアル 改訂新版』(幻冬舎メディアコンサルティング)、『図解90分でわかる!相続実務士が解決!財産を減らさない相続対策』(クロスメディア・パブリッシング)、『図解 身内が亡くなった後の手続きがすべてわかる本 2025年版 』(扶桑社)など多数。
◆相続対策専門士とは?◆
公益財団法人 不動産流通推進センター(旧 不動産流通近代化センター、retpc.jp) 認定資格。国土交通大臣の登録を受け、不動産コンサルティングを円滑に行うために必要な知識及び技能に関する試験に合格し、宅建取引士・不動産鑑定士・一級建築士の資格を有する者が「公認 不動産コンサルティングマスター」と認定され、そのなかから相続に関する専門コースを修了したものが「相続対策専門士」として認定されます。相続対策専門士は、顧客のニーズを把握し、ワンストップで解決に導くための提案を行います。なお、資格は1年ごとの更新制で、業務を通じて更新要件を満たす必要があります。
「相続対策専門士」は問題解決の窓口となり、弁護士、税理士の業務につなげていく役割であり、業法に抵触する職務を担当することはありません。
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