父親の税金滞納で自宅差し押さえの通知を受け取った翔太さん(35歳・男性)。自宅が借地の場合は、売ることをあきらめて差し押さえられたほうがよいのでしょうか?本記事では、相続実務士である曽根惠子氏(株式会社夢相続代表取締役)が具体的な事例をまじえて、借地権付き建物の売却について解説します。
ひとり親方として建設業を営んでいた父親
翔太さん(35歳・男性)が相談に来られました。
父親は70歳、母親が68歳。兄と姉がいます。実家は両親が2人暮らし、子どもたちは3人とも結婚を機に家を離れました。
父親は建築業ですが、子どもたちは跡を継ぐ意思はなく、父親がひとり親方として続けてきました。けれども2年前に体調を崩して入院、手術となりました。何とか回復、退院できましたが、仕事は続けられず廃業をする予定です。
自宅に差し押さえの通知が届いた
仕事は父親が一人でしていましたので、母親や当時同居していた長男はまったくタッチしておらず、わからない状態でした。お金の管理も確定申告も、父親が全部自分でしていました。
そんな父親が4年前、突然、脳梗塞で倒れてしまったのです。家族は入院などのサポートをするのが精いっぱいという状態でしたが、父親は一命を取り留めました。
そんな頃、税務署から自宅の建物を差し押さえするという通知が届いたのです。問い合わせてみると父親は所得税の申告はしていたものの、4年以上も滞納しているということが判明したのです。
自宅は借地
翔太さんの父親は最寄り駅から徒歩5分の立地に店舗併用住宅を建てて、1階の一部を貸しています。1階の半分が仕事用の事務所、2階と3階が自宅です。土地は借地で、祖父の代から借りており、毎月地代を3万円払っています。
自宅建物の建築費の借り入れは1,500万円残っていますが、1階の家賃収入から返済できていて、こちらの滞納はありません。1階の家賃収入があれば問題なく返済でき、家計費の一部にもなります。
株式会社夢相続代表取締役
公認不動産コンサルティングマスター
相続対策専門士
相続実務士®
株式会社夢相続 代表取締役
一般社団法人相続実務協会 代表理事
一般社団法人首都圏不動産共創協会 理事
一般社団法人不動産女性塾 理事
京都府立大学女子短期大学卒。PHP研究所勤務後、1987年に不動産コンサルティング会社を創業。土地活用提案、賃貸管理業務を行う中で相続対策事業を開始。2001年に相続対策の専門会社として夢相続を分社。相続実務士の創始者として1万4400件の相続相談に対処。弁護士、税理士、司法書士、不動産鑑定士など相続に関わる専門家と提携し、感情面、経済面、収益面に配慮した「オーダーメード相続」を提案、サポートしている。
著書86冊累計81万部、TV・ラジオ出演358回、新聞・雑誌掲載1092回、セミナー登壇677回を数える。著書に、『図解でわかる 相続発生後でも間に合う完全節税マニュアル 改訂新版』(幻冬舎メディアコンサルティング)、『図解90分でわかる!相続実務士が解決!財産を減らさない相続対策』(クロスメディア・パブリッシング)、『図解 身内が亡くなった後の手続きがすべてわかる本 2025年版 』(扶桑社)など多数。
◆相続対策専門士とは?◆
公益財団法人 不動産流通推進センター(旧 不動産流通近代化センター、retpc.jp) 認定資格。国土交通大臣の登録を受け、不動産コンサルティングを円滑に行うために必要な知識及び技能に関する試験に合格し、宅建取引士・不動産鑑定士・一級建築士の資格を有する者が「公認 不動産コンサルティングマスター」と認定され、そのなかから相続に関する専門コースを修了したものが「相続対策専門士」として認定されます。相続対策専門士は、顧客のニーズを把握し、ワンストップで解決に導くための提案を行います。なお、資格は1年ごとの更新制で、業務を通じて更新要件を満たす必要があります。
「相続対策専門士」は問題解決の窓口となり、弁護士、税理士の業務につなげていく役割であり、業法に抵触する職務を担当することはありません。
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