どうすんのこれ…亡夫が母親から相続した土地は原野商法で購入した那須の山林60坪…残された63歳女性が〈昭和の負の遺産〉を前に呆然としたワケ【相続の専門家が解説】

どうすんのこれ…亡夫が母親から相続した土地は原野商法で購入した那須の山林60坪…残された63歳女性が〈昭和の負の遺産〉を前に呆然としたワケ【相続の専門家が解説】
(※写真はイメージです/PIXTA)

不要な土地や役割を終えた土地は、処分するのが妥当ですが、道路がないなどの理由で売却が難しい場合があります。こうした土地は、国庫帰属制度でも救済されないため、処分に困ることになります。本記事では、相続実務士である曽根惠子氏(株式会社夢相続代表取締役)が事例をまじえて、できる対策について詳しく解説します。

相続土地国庫帰属制度とは

1. 制度のポイント

(1)相続等によって、土地の所有権又は共有持分を取得した者等は、法務大臣に対して、その土地の所有権を国庫に帰属させることについて、承認を申請することができます。

 

(2)法務大臣は、承認の審査をするために必要と判断したときは、その職員に調査をさせることができます。

 

(3)法務大臣は、承認申請された土地が、通常の管理や処分をするよりも多くの費用や労力がかかる土地として法令に規定されたものに当たらないと判断したときは、土地の所有権の国庫への帰属について承認をします。(「4. 引き取ることができない土地」を参照)

 

(4)土地の所有権の国庫への帰属の承認を受けた方が、一定の負担金を国に納付した時点で、土地の所有権が国庫に帰属します。

 

2.申請ができる人

相続又は相続人に対する遺贈(以下「相続等」といいます。)によって土地を取得した方が申請可能です。

 

相続等以外の原因(売買など)により自ら土地を取得した方や、相続等により土地を取得することができない法人は、基本的に本制度を利用することはできません。相続等により、土地の共有持分を取得した共有者は、共有者の全員が共同して申請を行うことによって、本制度を利用することができます。

 

土地の共有持分を相続等以外の原因により取得した共有者(例:売買により共有持分を取得した共有者)がいる場合であっても、相続等により共有持分を取得した共有者がいるときは、共有者の全員が共同して申請を行うことによって、本制度を利用することができます。本制度開始(令和5年4月27日)より前に相続等によって取得した土地についても、本制度の対象となります。

 

たとえば、数十年前に相続した土地についても、本制度の対象となります。

 

3. 申請先・相談先について

申請先は、帰属の承認申請をする土地が所在する都道府県の法務局・地方法務局(本局)の不動産登記部門(登記部門)となります。

 

法務局・地方法務局の支局・出張所では、承認申請の受付はできませんのでご注意ください。全国の法務局・地方法務局において、制度の利用に関する相談を受け付けています。

 

4. 引き取ることができない土地

国が引き取ることができない土地の要件については、相続等により取得した土地所有権の国庫への帰属に関する法律(令和3年法律第25号。以下「法」といいます。)において定められています。(※)

 

【引き取ることができない土地の要件の概要】

(1)申請をすることができないケース(却下事由)(法第2条第3項)

A 建物がある土地

B 担保権や使用収益権が設定されている土地

C 他人の利用が予定されている土地

D 土壌汚染されている土地

E 境界が明らかでない土地・所有権の存否や範囲について争いがある土地

 

(2)承認を受けることができないケース(不承認事由)(法第5条第1項)

A 一定の勾配・高さの崖があって、管理に過分な費用・労力がかかる土地

B 土地の管理・処分を阻害する有体物が地上にある土地

C 土地の管理・処分のために、除去しなければいけない有体物が地下にある土地

D 隣接する土地の所有者等との争訟によらなければ管理・処分ができない土地

E その他、通常の管理・処分に当たって過分な費用・労力がかかる土地

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