父親が亡くなって残された妻と長女、長男が相続手続きに入った際に発覚したのは、専業主婦の母が父親以上に金融資産があったということでした。顧問税理士は、亡くなった父親の相続税の申告をする際、母親の預金も「名義預金」として父親の財産に加算しなければならないと主張しますが、それでは2,445万円も相続税が増えてしまうことに……本記事では、相続実務士である曽根惠子氏(株式会社夢相続代表取締役)が事例をまじえて、できる対策について詳しく解説します。
父親が亡くなって相続税の申告が必要
遥さん(42歳女性)が相談に来ました。85歳の父親が亡くなり、母親(78歳)と弟(40歳)の3人で相続手続きをすることになったといいます。
亡くなった父親は自宅敷地で加工業を営んできて、80歳でリタイヤ。実家に同居する弟が跡を継いでいます。母親は経理を手伝ったりした時期もありましたが、ほとんど専業主婦として生活してきました。
父親は会社組織にしてきたので、弟に代替わりする前は自分が株を持ち、代表者として会社運営をしてきました。母親は役員でもなく、会社の株も現在は弟が引き受けています。
長女の遥さんは結婚して実家を離れて、県内ながら別世帯です。
父親の財産と母親の預金
父親が亡くなったため、弟が手配し、以前から決算を担当している税理士に相続税の申告の相談をしてみたといいます。
お父さんの財産は自宅と会社が使用する土地、建物、駐車場など不動産が5か所あり、評価は1億8,000万円、他に預金、株などで5,000万円。あわせて2億3,000万円だとわかりました。それだけでも相続税が3,450万円という計算になります。
ここで問題になったのは、父親の金融資産は5,000万円なのですが、それとは別に母親の預金と株、生命保険を合わせると7,500万円。父親以上に金融資産があるということが判明したのです。
顧問税理士の見解
顧問税理士は、亡くなった父親の相続税の申告をする際、母親の預金も「名義預金」として父親の財産に加算しなければならないというのです。理由を聞くと、母親は専業主婦なので父親よりも預金が多いのは不自然だから、とのこと。
父親の財産に母親の金融資産を加えると3億円を超える財産となり、相続税は5,895万円。2,445万円も相続税が増えてしまいます。
これは母親の財産の32.6%という割合です。まだ配偶者の税額軽減や同居の小規模宅地等の特例が使えるとはいえ、確実に納税は増えるのです。
顧問税理士のいうとおりに申告しないといけないのだろうか? アドバイスをもらいたいというのが遥さんの相談の内容でした。
株式会社夢相続代表取締役
公認不動産コンサルティングマスター
相続対策専門士
京都府立大学女子短期大学卒。PHP研究所勤務後、1987年に不動産コンサルティング会社を創業。土地活用提案、賃貸管理業務を行う中で相続対策事業を開始。2001年に相続対策の専門会社として夢相続を分社。相続実務士の創始者として1万4400件の相続相談に対処。弁護士、税理士、司法書士、不動産鑑定士など相続に関わる専門家と提携し、感情面、経済面、収益面に配慮した「オーダーメード相続」を提案、サポートしている。
著書65冊累計58万部、TV・ラジオ出演127回、新聞・雑誌掲載810回、セミナー登壇578回を数える。著書に、『図解でわかる 相続発生後でも間に合う完全節税マニュアル 改訂新版』(幻冬舎メディアコンサルティング)、『図解90分でわかる!相続実務士が解決!財産を減らさない相続対策』(クロスメディア・パブリッシング)、『図解 身内が亡くなった後の手続きがすべてわかる本 2021年版 (別冊ESSE) 』(扶桑社)など多数。
◆相続対策専門士とは?◆
公益財団法人 不動産流通推進センター(旧 不動産流通近代化センター、retpc.jp) 認定資格。国土交通大臣の登録を受け、不動産コンサルティングを円滑に行うために必要な知識及び技能に関する試験に合格し、宅建取引士・不動産鑑定士・一級建築士の資格を有する者が「公認 不動産コンサルティングマスター」と認定され、そのなかから相続に関する専門コースを修了したものが「相続対策専門士」として認定されます。相続対策専門士は、顧客のニーズを把握し、ワンストップで解決に導くための提案を行います。なお、資格は1年ごとの更新制で、業務を通じて更新要件を満たす必要があります。
「相続対策専門士」は問題解決の窓口となり、弁護士、税理士の業務につなげていく役割であり、業法に抵触する職務を担当することはありません。
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