どうすんのこれ…亡夫が母親から相続した土地は原野商法で購入した那須の山林60坪…残された63歳女性が〈昭和の負の遺産〉を前に呆然としたワケ【相続の専門家が解説】

どうすんのこれ…亡夫が母親から相続した土地は原野商法で購入した那須の山林60坪…残された63歳女性が〈昭和の負の遺産〉を前に呆然としたワケ【相続の専門家が解説】
(※写真はイメージです/PIXTA)

不要な土地や役割を終えた土地は、処分するのが妥当ですが、道路がないなどの理由で売却が難しい場合があります。こうした土地は、国庫帰属制度でも救済されないため、処分に困ることになります。本記事では、相続実務士である曽根惠子氏(株式会社夢相続代表取締役)が事例をまじえて、できる対策について詳しく解説します。

青子さんの場合 亡夫の母親が買わされた那須の土地

青子さん(63歳女性)は夫を亡くして相続手続きが必要だと相談に来られました。相続人は配偶者の青子さんと息子2人で、遺産分割に問題はないのですが、唯一の不安材料があるといいます。

 

それは亡夫が母親から相続した土地で原野商法(値上がりの見込みがほとんどないような山林や原野について『将来高値で売れる』などと勧誘して不当に買わせるもの)で騙され購入した那須にある60坪の山林です。亡夫の生前にも調べたといいますが、未接道で隣地との境界が不明のため、売却も、国庫帰属もできない状態です。(知り合いの不動産会社や那須の不動産会社、宇都宮法務局に確認済み)

 

幸い、管理費も固定資産税も不要なので、維持費はかかりませんが、本当は相続したくない土地です。それでも今回、夫が亡くなったため、登記をしなくてはならないので、自分の死後、子どもたちに禍根を残さないようにしたいと思っているとのこと。子どもたちから「お母さんではなく、子や孫が相続すれば、登記費用を1回分なり節約できるかな?」と聞かれているので、そうしたことができるかというご質問でした。

 

それに対する回答は、「那須の土地を相続できるのは、亡夫の配偶者と2人の子どもたちのいずれか。今回の相続人を飛ばしていきなり、お孫さんにすることはできません。これからできる選択肢は、青子さんが相続して遺言書で孫に遺贈、あるいは子どもが相続してその子(孫)に相続するか、このいずれかになります。

 

いずれにしても、自分は相続したくない土地で、売却も、国庫に帰属させることも難しく、本当はいらない土地だといいます。

英樹さんの場合 昭和46年に母親が購入した故郷の土地

英樹さん(54歳男性)の場合は、父親から相続した生まれ故郷にある土地です。英樹さんは大学時代から故郷を離れて生活しており、実家は兄が継いでいます。父親が亡くなったとき、母親と兄から、実家の土地を分けることはできないので、父親が買っていた近くの土地を相続したらと勧められて、自分の名義にしました。

 

しかし、仕事の関係で故郷には戻らず、結婚して子どもができてからは、会社に通いやすいところに家を購入して生活しています。妻も子どもも、英樹さんの故郷には家族で帰省する際に訪れる程度で生活したことはありません。

 

英樹さんは母親の相続の際に兄と遺産分割協議で苦労したことがあり、そろそろ自分の相続準備として遺言書を作成しておこうと相談に来られました。

 

自分の財産はシンプルで、自宅は妻に、預金や株などの金融資産は法定割合にすると決めましたので、公正証書遺言の原稿もできあがりました。

 

しかし、ここで課題になったのは、父親から相続した故郷にある土地です。45坪の山林で、名義替えの費用は掛かりましたが、それ以後、固定資産税の請求もなく、払ったことがありません。

 

登記簿から推測すると、父親は昭和40年代に買っていますので、値上がりするという期待を持っていたのかもしれませんが、実家から離れた山間のようで、英樹さん自身もよく場所がわからない状況。妻に聞いてもいらないといいます。

 

英樹さんからは、国庫帰属制度を利用して、妻子には残さないようにしたいという相談でした。

 

売れる土地であれば、自分で処分しておきましょうとアドバイスしたいところですが、住宅地図や公図などで位置関係を調べてみると、公道に接道しておらず、整地もされていない山林のよう。これでは売却も、国庫に帰属もできないという判断になりました。

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