資産家である父親の相続対策に悩む夏行さん兄妹。広大な自宅敷地や貸店舗を所有する父親の財産は3億5,000万円に上るものの、相続税9,000万円を支払う現金が不足しています。このままでは土地の切り売りや母屋の取り壊しが避けられない可能性が……。本記事では、相続実務士である曽根惠子氏(株式会社夢相続代表取締役)が事例をまじえて、相続の生前対策について詳しく解説します。
土地持ちの資産家
夏行さん(52歳・男性)は82歳になった父親に相続対策をしてもらいたいと妹と2人で相談に来られました。
長男の夏行さんは妻と2人の子供とで、実家の敷地内にある父親名義の家に住んでいます。妹は隣の県に嫁ぎ、夫と子供の4人家族で生活しています。
母親が5年前に亡くなり、広い母屋で父親は一人暮らしをしています。まだ元気だというものの、配偶者の特例が使えないため、相続税が気になります。父親もそろそろ相続対策しようという気持ちになってくれたということで、父親の代わりに相談に来られたのです。
土地を維持するだけの財産
夏行さんの父親は自宅と貸店舗の2つの不動産を所有しています。自宅は1,000坪、貸店舗は800坪あり、土地の評価は3億円。金融資産を合わせると3億5,000万円。相続税は9,000万円程度かかります。所有する現金では払いきれないことは明白です。
貸店舗は賃貸料が入りますので、固定資産税を負担してもプラス財産だと言えますが、1,000坪の自宅の収入はありません。
貸店舗の賃貸収入から土地、建物の固定資産税を払うと、家賃収入の40%が減り、残る60%だけでは生活費と所得税に充てると残らないのが現状です。維持するだけの財産になってしまっています。
相続税が払えない
父親の財産では相続税を払えるだけの預金がありません。このままでは相続になったら自宅の土地を切り売りしないといけなくなります。けれども敷地の真ん中に母屋が建っていることから、場合によっては母屋を壊さないといれないことも想定されます。
それだけではなく、妹に渡すお金もないため、相続のときはどこかを売らないといけなくなると覚悟しているそうです。それでも、今からできることがあれば対策をしておきたいということです。
お父さんも対策を考えたいことは同意しているということで、相続プランをしてもらいたいと委託を頂きました。
株式会社夢相続代表取締役
公認不動産コンサルティングマスター
相続対策専門士
京都府立大学女子短期大学卒。PHP研究所勤務後、1987年に不動産コンサルティング会社を創業。土地活用提案、賃貸管理業務を行う中で相続対策事業を開始。2001年に相続対策の専門会社として夢相続を分社。相続実務士の創始者として1万4400件の相続相談に対処。弁護士、税理士、司法書士、不動産鑑定士など相続に関わる専門家と提携し、感情面、経済面、収益面に配慮した「オーダーメード相続」を提案、サポートしている。
著書65冊累計58万部、TV・ラジオ出演127回、新聞・雑誌掲載810回、セミナー登壇578回を数える。著書に、『図解でわかる 相続発生後でも間に合う完全節税マニュアル 改訂新版』(幻冬舎メディアコンサルティング)、『図解90分でわかる!相続実務士が解決!財産を減らさない相続対策』(クロスメディア・パブリッシング)、『図解 身内が亡くなった後の手続きがすべてわかる本 2021年版 (別冊ESSE) 』(扶桑社)など多数。
◆相続対策専門士とは?◆
公益財団法人 不動産流通推進センター(旧 不動産流通近代化センター、retpc.jp) 認定資格。国土交通大臣の登録を受け、不動産コンサルティングを円滑に行うために必要な知識及び技能に関する試験に合格し、宅建取引士・不動産鑑定士・一級建築士の資格を有する者が「公認 不動産コンサルティングマスター」と認定され、そのなかから相続に関する専門コースを修了したものが「相続対策専門士」として認定されます。相続対策専門士は、顧客のニーズを把握し、ワンストップで解決に導くための提案を行います。なお、資格は1年ごとの更新制で、業務を通じて更新要件を満たす必要があります。
「相続対策専門士」は問題解決の窓口となり、弁護士、税理士の業務につなげていく役割であり、業法に抵触する職務を担当することはありません。
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