(※写真はイメージです/PIXTA)

少子高齢化などを背景に、経営者の高齢化が深刻な日本。実際、年間3万社以上の企業が廃業しており、その主因は「後継者不在」にあると、株式会社タナベコンサルティングの藤井健太執行役員はいいます。経営戦略のひとつとして「事業承継」が急務となるなか、成功のカギはどこにあるのでしょうか。2社の事例とともに、詳しくみていきましょう。

70代以上の経営者漸減も…依然として若い経営者が少ない日本

まずは、下記の3つの図表をご確認いただきたい。

 

出所:中小企業庁「中小企業の事業承継・M&Aに関する現状分析」(2024年6月28日)をもとにタナベコンサルティング作成
[図表1]経営者の年齢割合の変化/後継者不在率の推移(年代別) 出所:中小企業庁「中小企業の事業承継・M&Aに関する現状分析」(2024年6月28日)

 

出所:中小企業庁「中小企業の事業承継・M&Aに関する現状分析」(2024年6月28日)をもとにタナベコンサルティング作成
[図表2]経営者年齢の国際比較 出所:中小企業庁「中小企業の事業承継・M&Aに関する現状分析」(2024年6月28日)

 

出所:中小企業庁「事業承継・M&Aに関する課題認識」(2024年6月28日)をもとにタナベコンサルティング作成
[図表3]経営者年齢層別の売上高の変化/代表者年齢と売上高増加の関係 出所:中小企業庁「事業承継・M&Aに関する課題認識」(2024年6月28日)

 

2023年時点の経営者の平均年齢は60.5歳であり、過去最高を更新している。さらに、70代以上の経営者の割合も継続して増加している。

 

一方で、70代以上の経営者の割合の増加率は漸減しており、後継者不在率も低下傾向にあることからも、事業承継には一定の進展が見られる。しかしながら、日本は50代以下の経営者の割合が他国と比較して依然低く、60代以上の割合が高い状況にある。

 

年齢が若いほど売り上げ高の伸びが大きい…経営戦略として「事業承継」が急務

経営者年齢と売上高に注目すると、経営者年齢が若いほど売上高の伸びが大きくなる傾向にある。50代で経営者になった方からは、「あと10年早く、30~40代の頃に会社を引き継いでいれば、もっと攻めの経営ができた」といった話を聞くことも多い。

事業承継には「最低10年」必要

経験上、事業承継が遅れる要因は主に以下3点と考えられる。

 

1.2~3年で承継できると考えている

2.後継者の選定が遅い

3.権限と責任を委譲しない

 

真因は「事業承継計画の策定・実行が遅い」ことである。事業承継は株式の承継だけではなく、もっとも大切なのは、「人・組織」の承継である。

 

したがって、承継完了までに少なくとも10年は必要である。具体的な目安としては、人脈を承継し、後継者に経営者としての帝王学を教える(5年)、両代表取締役として後継者と伴走する(3年)、代表権を外して見守る(2年)という流れである。

 

次期後継者を支えるブレーンの育成も同時に行わなければならない。加えて、現経営者のブレーンの処遇も決める必要がある。これらは場当たり的にはできない。計画的に進めるべき企業の最大の経営戦略である。

 

なお、2015年のコーポレートガバナンス・コード制定以来、上場企業にはサクセッションプランに関する取り組みが強く要請されている。2018年に改訂されたその内容を整理すると、以下のとおりである。

 

<補充原則4-1③>

取締役会は、会社の目指すところ(経営理念等)や具体的な経営戦略を踏まえ、最高経営責任者(CEO)等の後継者計画(プランニング)の策定・運用に主体的に関与するとともに、後継者候補の育成が十分な時間と資源をかけて計画的に行われていくよう、適切に監督を行うべきである。

 

しかしながら、プライム上場企業においても、サクセッションプランを策定している割合は約40%と少ないのが実情である。

 

だが、上場・非上場に関わらず、サクセッションプランはすべての企業への指針である。特に経営者の高齢化が進んでいる日本企業においては、経営者になにかが起きた場合、突然経営が立ち行かなくなる。

 

後継者においても同様で、選定からやり直しとなる。筆者も経営コンサルタントとして多くの企業と対峙するなかで、経営者の突然の体調不良等により事業承継せざるを得なくなったものの、準備不足により承継に苦労する後継者を幾度も見てきた。経営には「マサカ」の坂があるのだ。

 

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