(※写真はイメージです/PIXTA)

グループ経営の利点は、単独の事業では達成できない成果を生み出せるという点にあります。シナジー効果を最大化させるには、どのようなアプローチが重要なのでしょうか。事業承継を見据え、グループ経営におけるルールを明確にして持続的な成長を目指すA社グループの事例を紹介します。株式会社タナベコンサルティングの阿部和也氏が解説します。

グループ企業の価値を高める経営手法

A社グループは、建設用資材の卸売や小売業、サービス業など多角的な事業を展開しており、ここ数年間でM&Aによって会社数も増加している。しかし、それぞれの会社では従来の業務運営が続けられており、非効率な仕事や重複する業務が発生するなど、さまざまな問題が顕在化していた。


そこで、当社とともに「グループで持続的に成長していくためのルールを決め、それを『A社グループ経営ブック』として明文化し、全社員で共有化する」プロジェクトをスタートした。

 

A社グループでは、M&Aによって事業会社が増えていたが、当初想定していた「シナジー効果」が発揮されないという課題に直面していた。各事業会社が従来の事業運営を優先することで、グループ全体最適ではなく、部分最適になっていたことが最大の要因だった。

 

そのため、グループ経営に求められる5つのテーマを設定し、全体最適の戦略、迅速な意思決定、マネジメントの高度化を目的として、A社グループの幹部社員と当社がプロジェクトとして進めていくことになった。

 

〈5つのテーマ〉

(1)グループ理念

(2)シェアードサービス機能

(3)経営企画機能

(4)ガバナンス機能

(5)マネジメント機能
 

 

出所:タナベコンサルティング作成
[図表1]グループ経営に求められる5つのテーマ 出所:タナベコンサルティング作成

 

ゴール設定と認識の共有

プロジェクトのゴールは「グループ経営ブック」の策定と設定した。この「グループ経営ブック」は、A社グループが世代を超えて発展し続けるために、組織の基本的な運営や意思決定ルールを定めたものであり、多事業に携わるグループ全社員が遵守すべきガバナンスやマネジメント、シェアードシステムのルールを明文化したものである。

 

画像はイメージです 出所:PIXTA
画像はイメージです/PIXTA

情報の「共有化・デジタル化」でグループシナジーを強化

まず、ホールディング会社で共有すべき情報を整理し、これらの情報を各事業会社から集約して共有する仕組みを確立することで、各社間のシナジーを強化した。

 

具体的には、業績管理情報、仕入・在庫情報、顧客情報、会計情報をホールディング会社の管理部が集約し、経営会議・営業会議で業績対策の情報として活用する。将来的には、事業会社連携によるワンストップソリューションの提案や、グループ一括仕入の実現を目指す。

 

労務管理情報や人事情報は、ホールディング会社の人事部が集約する。特に超過労働時間の把握は徹底し、改善策の立案のために活用することが決まった。

 

また、人事情報や労務管理情報は、グループ人材会議で人材育成の企画立案や人材配置に関する情報として活用されることとなった。管理のための人事情報というよりも「人が成長する」ための人事情報に重きを置くことが重要なポイントである。

 

出所:タナベコンサルティングにて作成
[図表2]情報共有によって各社間のシナジーを強化 出所:タナベコンサルティングにて作成

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