税制改正大綱でも議論された富裕層への課税強化策、「貯蓄から投資へ」の政策課題を阻害しないか

税制改正大綱でも議論された富裕層への課税強化策、「貯蓄から投資へ」の政策課題を阻害しないか
(※写真はイメージです/PIXTA)

令和7年(2025年)度税制改正大綱でも議論に上っていたように富裕層への課税強化の機運は年々増しています。法人税、所得税、消費税という税収の大きな税目を増税するとなると、経済社会に与える影響が大きなことから、無難な富裕層とタバコの増税がよく話題になります。今回は、富裕層の課税強化策を検討します。本連載では、富裕層の国際相続の諸課題について解説します。

どうやって富裕層へ課税強化するか

富裕層へ課税強化する場合、その対象を財産にするのか、あるいは所得にするのかで分かれます。

 

さらに区分しますと、財産そのものを対象とする財産税、財産から生じる所得を対象とする富裕税、所得であれば北欧で導入されている「二元的所得税」が検討されてきました。

 

この「二元的所得税」とは、所得を勤労所得と資本所得を二元的に区分し、前者には累進税率、後者には比例税率を課すものです。要するに、富裕層が優遇されているといわれる「金融・証券税制」の課税のあり方です。

過去に最高税率90%の財産税を実施

財産に対する課税には、固定資産税のようなものもありますが、財産税は第二次世界大戦後の昭和21年に、軍需補償額(軍需会社の損失補償)支払いのため、あるいは国家財政の再建等の目的から、1度だけ実施されました。

 

財産税は大戦後のインフレーションを終息させるため、預金封鎖、新円切替等の措置が整い、最高税率90%で実施されました。

 

富裕層の課税に係る報道等では、「財産税の導入」という意見がありますが、財産を対象にする難しさがこの税にはあります。したがって、預金封鎖、新円切替による保有現金の制限等が必要になります。結論として、軽々に財産税というのは問題発言ということになります。

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