海外移住者の年金課税はどうなるの?…退職後のセカンドライフを外国で過ごす場合の年金事情【国際税務の専門家が解説】

海外移住者の年金課税はどうなるの?…退職後のセカンドライフを外国で過ごす場合の年金事情【国際税務の専門家が解説】
(※写真はイメージです/PIXTA)

海外への移住を検討する富裕層にとって、税制面や生活環境、資産運用が鍵となります。特に外国へ移住する場合、移住先の居住地国によって日本の公的年金に対する課税対応は大きく異なります。本稿では、海外移住者の年金課税について詳しく解説します。

ゴールドオンライン新書最新刊、Amazonにて好評発売中! 

『司法書士が全部教える 「一人一法人」時代の会社の作り方【基本編】』
加陽麻里布(著)+ゴールドオンライン (編集)

『富裕層が知っておきたい世界の税制【カリブ海、欧州編】』
矢内一好 (著)+ゴールドオンライン (編集)

『司法書士が全部教える 「一人一法人」時代の会社の作り方【実践編】』
加陽麻里布(著)+ゴールドオンライン (編集)

シリーズ既刊本も好評発売中 → 紹介ページはコチラ!

外国へ移住した場合の日本の年金の課税

日本国内で受給する公的年金は、日本国内の税制に基づき課税されます。しかし、海外に移住した場合、その年金に対する課税は以下のステップに沿って決まります。

 

ステップ1:移住先の国と日本との間に租税条約が締結されているか?

YES(租税条約がある)→ステップ3へ

NO(租税条約がない)ステップ2へ

 

ステップ2:租税条約がない場合

日本と租税条約を締結していない国に移住した場合、日本の公的年金は国内源泉所得とみなされ、日本の非居住者として源泉分離課税が適用されます。計算式は以下になります。

 

年金支払額 - 控除額(65歳未満:5万円/65歳以上:9.5万円 × 支払い月数)× 20.42%

 

ステップ3:租税条約がある場合

締結されている租税条約に年金条項がある場合、年金に対する課税が軽減または免除される可能性があります。以下の条文は日米租税条約第17条(年金条項)第1項の規定です。

 

次条2の規定が適用される場合を除くほか、一方の締約国の居住者が受益者である退職年金その他これに類する報酬(社会保障制度に基づく給付を含む)に対しては、当該一方の締約国においてのみ租税を課することができる。

 

上記の規定は、日本から米国に移住した個人が米国居住者である場合、日本で支払われる退職年金などは米国でのみ課税となり、日本では課税されないという規定です。この規定は、退職後に生活する国でのみ課税することで、国際的に二重課税にならないように配慮したものです。

 

つまりは、日本から米国に移住し、米国居住者であれば、日本で支払われる年金は米国のみで課税され、日本では非課税になるということです。

ステップ4:年金条項がない場合

租税条約があっても年金条項がない国(カナダ、スウェーデン、タイ、南アフリカなど)に移住すると、日本の源泉徴収(20.42%)が適用される可能性が高く、現地での課税も発生するため、二重課税のリスクがあります。

 

該当する国の租税条約では「その他所得条項」が適用され、多くの場合、源泉地国課税(日本で課税)となります。

日本と年金条項のある租税条約を締結している国への移住

年金条項のある租税条約を締結している国への移住の場合、移住先の国(居住地国)で課税され、支払い国である日本では課税がないことは、先に説明しました。

 

ただし一部の租税条約では源泉地国(日本)での課税も認められています。

 

アイスランド、デンマーク、ベルギー、ロシアの租税条約は、以下のただし書きにより源泉地国課税も認めています。

 

以下は、アイスランド租税条約第17条第1項のただし書きの部分です。

 

ただし、当該退職年金、社会保障制度に基づく給付その他これらに類する報酬が他方の締約国内において生ずる場合には、当該他方の締約国においても租税を課することができる。 

 

また、日独租税協定の年金条項(第17条)では、上記と異なる規定があり、源泉地国課税が認められています。

 

政治的迫害または戦争の結果受けた傷害もしくは損害に対する補償(損害賠償を含む)として、一方の締約国、一方の締約国の州または一方の締約国の地方政府もしくは地方公共団体によって他方の締約国の居住者である者に支払われる継続的または一時的な給付に対しては、当該一方の締約国においてのみ租税を課することができる。

条約で相手国が所得税を課さない場合

日本は、中東の産油国であるアラブ首長国連邦(UAE)やオマーン、カタール、クウェート、サウジアラビアと租税条約を締結しています。これらの租税条約の年金条項は、居住地国課税を規定しています。日本からこれらの国に移住して年金を受け取る場合、居住地国である上記の産油国のみの課税になりますが、これらの国は個人の所得税がありません。結果として、日本と移住先の上記の国々の双方で課税がないことになります。

 

海外移住を計画する際は、移住先の租税条約と年金課税の仕組みを十分理解し、税務リスクを最小限に抑えることが重要です。

 

矢内一好

国際課税研究所首席研究員

 

企業オーナー・医療法人のための
事業と個人の安心を守る「グローバル資産戦略」
>>>12月11日(木)ライブ配信

 

富裕層だけが知っている資産防衛術のトレンドをお届け!

 

             >>カメハメハ倶楽部<<

カメハメハ倶楽部セミナー・イベント

 

【12/9開催】
「資産は借りて増やせ!」
3年間で延べ1,500社以上を担当した元銀行トップセールス社長が語る
“新規事業×融資活用”で資産を増やすレバレッジ経営戦略

 

【12/11開催】
企業オーナー・医療法人のための
事業と個人の安心を守る「グローバル資産戦略」
〜実例で学ぶ 経営資産の防衛と承継設計〜

 

【12/13-14開催】
不動産オーナーのための「法人化戦略」
賢いタックスプランニングで“キャッシュを最大化する”方法

 

 

カインドネスシリーズを展開するハウスリンクホームの「資料請求」詳細はこちらです
川柳コンテストの詳細はコチラです アパート経営オンラインはこちらです。 富裕層のためのセミナー情報、詳細はこちらです 富裕層のための会員組織「カメハメハ倶楽部」の詳細はこちらです 不動産小口化商品の情報サイト「不動産小口化商品ナビ」はこちらです 特設サイト「社長・院長のためのDXナビ」はこちらです オリックス銀行が展開する不動産投資情報サイト「manabu不動産投資」はこちらです 一人でも多くの読者に学びの場を提供する情報サイト「話題の本.com」はこちらです THE GOLD ONLINEへの広告掲載について、詳細はこちらです

人気記事ランキング

  • デイリー
  • 週間
  • 月間

メルマガ会員登録者の
ご案内

メルマガ会員限定記事をお読みいただける他、新着記事の一覧をメールで配信。カメハメハ倶楽部主催の各種セミナー案内等、知的武装をし、行動するための情報を厳選してお届けします。

メルマガ登録