韓国で25年ぶりの相続税改正…サムスン電子の相続事例にみる“重税国家”の今後【国際税務の専門家が解説】

韓国で25年ぶりの相続税改正…サムスン電子の相続事例にみる“重税国家”の今後【国際税務の専門家が解説】
(※写真はイメージです/PIXTA)

2025年3月25日、サムスン電子の韓宗熙副会長が急逝したことが報じられ、同社の経営体制とともに韓国の相続税制度にも大きな関心が集まっています。韓副会長はサムスンの家電およびスマートフォン部門を統括し、実質的なナンバー2の立場で企業の成長を支えてきました。さらに、韓国政府が2024年に相続税の改正を発表したことが特に大企業の相続に与える影響を再度注目されています。本稿では、韓国の相続税制度とその現状について、国際税務の専門家が解説します。

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サムスン電子の韓宗熙副会長が急死

2025年3月25日、韓国のサムスン電子において、韓宗熙(ハン・ジョンヒ)副会長が心臓まひにより逝去しました。享年63歳。韓副会長は家電およびスマートフォン部門を担当し、同社の経営陣の中では実質的にナンバー2の立場にありました。創業者一族ではありませんでしたが、その急逝により、サムスンの経営体制および韓国の相続税制度への関心が再び高まっています。

 

サムスン電子の成長と経営体制

サムスン電子は、1938年に李秉喆(イ・ビョンチョル)氏によって創業され、最初は野菜などの貿易業を営んでいました。しかし、1977年には韓国半導体を買収し、半導体産業に本格的に参入しました。1987年に創業者が逝去すると、三男の李健熙(イ・ゴンヒ)氏が二代目会長に就任し、携帯電話の開発などを契機に、サムスンは世界的な電子機器メーカーへと成長を遂げました。


2020年に李健熙会長が逝去した後は、長男の李在鎔(イ・ジェヨン)氏が三代目会長に就任しました。韓副会長は、家電およびスマートフォン部門を統括し、サムスンの中核事業を支えていました。

25年ぶりの相続税を大幅改正へ

2024年7月、韓国政府は25年ぶりに相続税の大幅な見直しを行うことを発表しました。この改正案では、相続税の最高税率が50%から40%に引き下げられ、また子が相続する場合の基礎控除額が5,000万ウォン(約550万円)から5億ウォンに引き上げられることが決まりました。

 

この改正案は、サムスン電子の李健熙会長の相続に影響を与えたとされています。李会長の相続においては、韓国相続税法に定められた「最大株主割増評価課税」の適用により、株式の評価額が20〜30%引き上げられ、実質的に50%を超える相続税が課される結果となりました。このため、一部報道では「税率50%超」との誤解が生じましたが、実際には評価額が引き上げられたことによる高額課税であったことが確認されています。

二代目会長の相続に関連した相続税の納付

李健熙会長の相続人は、妻と長男の李在鎔、娘2人の計4人であり、その相続税額は12兆ウォン(約1兆1,700億円)を超えるとされています。通常であれば、相続人はサムスン株を売却して相続税を納付することが予想されますが、実際には相続人は株式を売却せず、それらを担保に銀行から融資を受け、5年間で分割して納付する方法を選択しました。株式の配当が返済資金に充てられると考えられています。

韓国の相続税の概要

相続税の申告期限は、相続開始の日から6ヵ月で、遺言執行人または相続財産管理人の場合は、選任後から起算します。なお、被相続人または相続人が外国に住所を有する場合は9ヵ月です。申告は申告納税制度ではなく、上記の期限までに相続人のうちのひとりが「相続税課税標準申告」を提出し、税務署長がこの申告に基づいて課税標準および税額を決定する賦課課税方式が採用されています。

 

矢内一好

国際課税研究所首席研究員

 

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