税金を払わずに国外逃亡、そのときは国税当局はどう動くか。外国人納税者の脱税防止に向けた税務行政の国際的対応【国際税務の専門家が解説】

税金を払わずに国外逃亡、そのときは国税当局はどう動くか。外国人納税者の脱税防止に向けた税務行政の国際的対応【国際税務の専門家が解説】
(※写真はイメージです/PIXTA)

グローバル化の進展とともに、日本国内に不動産を所有したり、事業活動を行う外国人の数は年々増加しています。一方で、税務申告を怠ったまま本国へ帰国し、租税債務を未履行のまま国外逃亡するという事例も後を絶ちません。日本の税務当局はその対策として国内法の整備と国際的な協力体制の構築を進めています。本稿では、外国人による税金未納と国外逃亡の具体的な事例を紹介するとともに、非居住者への源泉徴収制度、国際的な徴収共助条約の仕組み、日本が他国で実施した徴収事例を取り上げます。

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税金未納で国外逃亡

過去には、日本国内に不動産を所有していた外国人が、本国へ帰国する際、値上がりした不動産を売却し、日本で税金を納めることなく帰国したケースがあります。また、日本で競馬により多額の賞金を得ながら、税を納めずに国外へ逃亡した事例も存在します。


さらに、日本で事業を営み、多額の消費税を未納のまま強制捜査を受けたあと、「本国の親族が病気」という理由で帰国し、再来日しなかったケースも報告されています。


税金は「賦課」と「徴収」に分類されます。上記のように無申告のまま国外逃亡した場合、日本の税務当局は「決定処分」を行い、その書面を現在の住所地に送付することで送達の効力が生じます。しかし、国外の銀行口座から税を徴収する手段がなかったのは、国際的な徴収協力体制が確立される前の話です。

非居住者の不動産譲渡における源泉徴収制度

日本に不動産を所有する非居住者(外国在住者)に対しては、譲渡所得の課税を担保するために、国内法で源泉徴収制度が設けられています。非居住者が日本国内の不動産を売却した際には、その譲渡対価に対して、所得税10%と復興特別所得税0.21%を合わせた計10.21%の税率で源泉徴収が行われます。


ただし、譲渡対価が1億円以下であり、その土地などを買い受けた人が自己または親族の居住用に取得した場合は、源泉徴収は免除されます。

税務行政執行共助条約と徴収共助の発展

日本は2011年11月4日に「税務行政執行共助条約」に署名し、2013年10月1日に発効しました。この条約は、課税情報の交換や徴収を含む税務行政の相互支援を目的とした多国間条約であり、一般的な租税条約よりも広範な効力を有します。


また、近年の二国間租税条約の改正(ニュージーランド、アメリカ、イギリスなど)により、徴収共助の適用範囲が拡大され、日本は条約相手国に対して税金未納者への徴収を正式に要請することが可能となっています。これにより、もはや「税金を払わず国外逃亡すれば逃げ得」という状況ではなくなりました。ただし、すべての国が対象ではなく、例えば中東の租税条約が存在しない国に帰国した場合、日本は徴収手段を持ちません。

日本の租税を外国で徴収

2018年9月17日の報道によれば、贈与税を滞納していたオーストラリア在住の男性から、約8億円の税を徴収したと報じられました。海外口座を差し押さえて徴収が実現したもので、日本の税務当局による国外徴収の成功例としては12件目、かつ初の億単位とされています。この徴収の法的根拠は、日豪租税条約ではなく、税務行政執行共助条約によるものと考えられます。


2021年5月には、タイ人の経営者が北海道・ニセコの土地を売却し約8億円の利益を得たにもかかわらず申告しなかった件について、日本の国税庁がタイ国税当局に調査を依頼し、結果として約1.4億円の徴収に成功しました。ただし、日タイ間の租税条約には徴収共助の規定がなかったため、強制的な徴収ではなく、現地当局の協力に基づく自主的な対応であったと考えられます。

 

矢内一好

国際課税研究所首席研究員

 

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