「令和の米騒動」をひもとく…穀物をめぐる国際間競争と国際税務、「穀物メジャー」の租税戦略【国際税務の専門家が解説】

「令和の米騒動」をひもとく…穀物をめぐる国際間競争と国際税務、「穀物メジャー」の租税戦略【国際税務の専門家が解説】
(※写真はイメージです/PIXTA)

かつて日本では、米の価格高騰が社会を揺るがす「米騒動」が二度にわたって発生しました。そしていま、令和の時代にふたたび米価が急騰し、政府が備蓄米の放出に踏み切る事態となっています。しかし、問題は米だけではありません。私たちの食卓を支える小麦や飼料の多くが外国に依存しており、その背景には、世界の食料市場を支配する多国籍企業の存在や、見えにくい租税戦略があります。これは単なる物価高の話ではなく、日本の食の安全保障と経済の構造そのものを問う「令和の米騒動」なのです。

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令和の米騒動

総務省が2月28日に発表した同月の小売物価統計(東京都区部)によると、2025年3月時点の東京都区部におけるコシヒカリ(5キロ)の小売価格は4,679円でした。これは前月比で7%上昇し、昨年5月から11ヵ月連続で上昇しています。また前年同月と比較すると2,209円(89%)高くなっています。


過去にも、大正7(1918)年および平成5(1993)年に米の価格が急騰し、「米騒動」と呼ばれる事態が発生しました。そして今年、急激な米価の上昇を背景に政府備蓄米の放出が話題となったことから、これはまさしく「令和の米騒動」といえるでしょう。

米と並ぶ必需品、小麦の現状

米と並び、現代の日本の食生活に欠かせないのが小麦です。パンや麺類、パスタなど、多くの食品に使われています。

 

農林水産省によると、日本の米の自給率はほぼ100%である一方、令和2年度時点の小麦自給率は15%にとどまっています。また、令和4年度時点での家畜飼料の自給率は26%です。

小麦は戦略物資

映画化もされた『ジャッカルの日』の作者、フレデリック・フォーサイスの小説『悪魔の選択』では、冷戦時代の米ソ間で小麦が国際的な戦略物資として扱われる様子が描かれています。

 

現代の日本では、米を除く多くの食料品が輸入に依存しており、今後は世界の食料支配構造に注目する必要があるでしょう。

穀物メジャーの存在

石油業界に「石油メジャー」が存在するように、穀物取引においても「穀物メジャー」と呼ばれる世界的大企業が存在します。これらの企業は、主に小麦やトウモロコシ、大豆などの穀物取引を牛耳っています。

 

石油産業が採掘から販売まで石油メジャーといわれるいくつかの会社に独占されているのと同様、小麦等の穀物における取引の多くも「穀物メジャー」といわれる5社によって占有されています。

 

この5社を2014年度の売上高順に並べると以下になります。

 

①グレンコア(2210億ドル)、②カーギル(1204億ドル)、③アーチャー・ダニエルズ・ミッドランド(812億ドル)、④ルイ・ドレフュス(647億ドル)、⑤ブンゲ(578億ドル)

 

ただし、1位のグレンコアは鉱物資源の取引も含んでいるため、実質的には2位から5位の4社が「穀物メジャー」といえます。


また、日本の総合商社もこれに続く形で穀物ビジネスを展開しており、日本における外国産小麦の輸入先は、米国、カナダ、オーストラリアの3ヵ国が大半を占めています。

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