(※写真はイメージです/PIXTA)

労働力不足などを鑑みると、今後、在留外国人が増えることが予想されます。中小企業などにおいては、今後在留外国人の税務や社会保障への対策が求められます。国際税務の専門家が解説します。

在留外国人の現況

日本は、労働力不足から多くの外国人を受け入れる方針です。在留外国人が増加している原因は、技術実習、特定技能の在留資格の該当者の増加が挙げられます。

 

しかし労働力としての受け入れについて、韓国あるいは台湾が好条件を出して求人していることから、労働力の争奪戦が繰り広げられています。

 

出入国在留管理庁の資料によれば、令和5年6月末現在における在留外国人数は322万3,858人で、前年末に比べ14万8,645人増加しています。在外邦人数が約130万人であることから、在外邦人数の倍以上の外国人が日本に居住していることになります。

 

以下は、国別の在留外国人数と前年比とのランキング上位5位です。

 

①中国78万8,495人(+2万6,932人)、②ベトナム52万154人(+3万842人)、③韓国41万1,748人(+436人)、④フィリピン30万9,943人(+1万1,203人)、⑤ブラジル21万563人(+1,132人)

 

6位以下の国名を列挙すると、⑥ネパール、⑦インドネシア、⑧ミャンマー、⑨米国、⑩台湾です。ミャンマーが前年11位から8位になっています。

 

上記に掲げたベトナムの人数増加の原因は、在留資格の特定技能の増加です。

在留資格と資格別ランキング

在留資格は27種類ありますが、在留資格別の上位5位までのランキングは以下のとおりです。

 

永住者(88万178人)、②技能実習(35万8,159人)、技術・人文知識・国際業務(34万6,116人)、④留学(30万5,916人)、特別永住者(28万4,807人)

 

最も増えたのは、②と③です。

都道府県別在留外国人数

都道府県別の在留外国人数の上位5位までのランキングは以下のとおりです。

 

①東京都(62万7,183人)、②愛知県(29万7,248人)、③大阪府(28万5,272人)、④神奈川県(25万8,738人)、⑤埼玉県(22万1,835人)

 

この数字から在留外国人の約3分の1は、首都圏在住ということになります。

技能実習制度・特定技能制度・育成就労法

インバウンドの外国人の場合、上記の在留資格でも多様な人材が入国していますが、労働力という観点からすると、平成5年に創設された技能実習制度から始まりました。この制度は、日本で習得した技術を母国に持ち帰って母国の技術向上を目的とした国際貢献の一環で、単純労働を目的とした外国人の受け入れではありませんでした。

 

特定技能制度は平成31年4月から導入されている新しい在留資格です。技能実習制度とは異なり、特定技能は日本の労働力不足を確保するための制度であることから、単純労働を含む仕事として、特定技能1号が12分野、特定技能2号が2分野でした。

 

育成就労制度創設に至る過程で、先行した技能実習制度の欠陥に対する補正が焦点となりました。技能実習制度は、人材育成を通じた技能移転による国際貢献が目的でしたが、国内企業等の労働力として運用され、目的と実態が乖離していました。

 

令和6年6月、在留資格が改正されました。従前の「技能実習」を廃止し、「育成就労」が創設されました。原則3年間で特定技能1号まで育成が目的で、転籍の制限が「技能実習法」では3年でしたが、「育成就労法」では1~2年と改正されました。

外国人増加に伴う税務

所得税法上、外国籍の者の課税は、非永住者の場合を除いて特に区別する理由はありません。外国人の多くが日本の居住者であれば居住者として課税し、給与所得者であれば年末調整、それ以外であれば申告納税が基本となります。注意すべきは、外国人の本国への送金と国外の扶養親族の控除問題です。

 

外国在住の親族(国外居住親族)の扶養について、扶養控除等の適用を受けるためには、「親族関係書類」および「送金関係書類」の提出・提示が義務づけられています。なお、30歳以上70歳未満の国外居住親族は原則としてこの制度の適用外です。

 

また、税務当局も、増加した外国人に対する説明書等の整備も必要になるでしょう。

国民健康保険への加入

平成24年7月9日に外国人登録制度が廃止され、外国人住民についても日本人と同様に住民基本台帳法の適用対象になっています。外国人が、住民基本台帳法の対象となった3カ月を超える在留資格を取得したとき、国民健康保険加入要件が満たされることとなりました。

 

ネット上の情報では、日本に病気治療の目的で来日して3カ月を超える在留資格を取得して国民健康保険を利用する者が多いといわれています。

 

 

矢内一好

国際課税研究所首席研究員

 

 

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