「遺産4600万円」を遺すも〈72歳夫〉には先妻との子供が…「代償金250万円」を払わないとダメですか?要介護5の夫をずっと介護してきた〈62歳女性〉が無力感を覚えたワケ【相続の専門家が解説】

「遺産4600万円」を遺すも〈72歳夫〉には先妻との子供が…「代償金250万円」を払わないとダメですか?要介護5の夫をずっと介護してきた〈62歳女性〉が無力感を覚えたワケ【相続の専門家が解説】
(※写真はイメージです/PIXTA)

仕事もやめ、長らく自宅で一人で夫の介護に専念してきた好子さん(60代女性)。夫が亡くなり、司法書士に相談してみると、遺産は息子と、40年間一度も会っていない前妻との娘とで3分割するのが法律上の基本だと言って、背景を聞いてもらえず……。本記事では相続実務士である曽根惠子氏(株式会社夢相続代表取締役)が、好子さんの取れる相続対策について詳しく解説します。

通知文例1

前略

 

この度、令和6年○○月○○日にお亡くなりました○○○○様(被相続人・亡くなった人)の相続手続きの依頼を受け、○○○○様(先妻の子)も相続人となられますため、連絡をさせていただいた次第です。

 

○○○○様(被相続人・亡くなった人)は脳梗塞で倒れて以降、10年以上もご家族で介護をされていた状況にありました。口頭での意思は明確でしたが、遺言書の作成は間に合わなかったため、○○○○様(先妻の子)にもご協力をお願いする必要がございました。

 

大変恐縮ではありますが、ご説明を差し上げ、ご意向を伺いたく存じますので、ご都合のよい時に下記まで、電話、メールを頂ければ幸いです。

 

後略

通知文例2

前略

 

令和6年○○月○○日にお亡くなりました○○○○様(被相続人・亡くなった人)の相続手続きの依頼をご家族より受け、相続人となられる○○○○様(先妻の子)に○○月○○日付のお手紙で連絡をさせていただきました。ご連絡をお待ちしておりましたが、現時点でまだご連絡を頂けておりません。

 

つきましては、お忙しいところ大変恐縮ではありますが、○○月○○日までに、下記まで電話、メール、手紙などでお返事を頂きたく、再度ご連絡を差し上げました。

 

先般もお伝えしたように、○○○○様は脳梗塞で倒れて以降、10年以上もご自宅で奥様が介護をされていた状況にありました。口頭での意思は明確でしたが、遺言書の作成は間に合わず、遺産分割協議が必要なためご協力をお願いする次第です。

 

本年、登記法が変わり、相続発生後3年以内に不動産の名義替えをすることが義務化となりました。それらを踏まえて、早々の相続手続きの必要があります。もし、このままご連絡を頂けない場合は、家庭裁判所の調停に申立てをせざるを得なくなり、○○○○様(先妻の子・相続人)にも時間や費用等のマイナス面が生じかねません。何卒、ご理解ご協力の程、よろしくお願い申し上げます。

 

後略。

まとめ

ほどなく先妻の子の代理人の弁護士から、「相続放棄の手続きを進める」という連絡がありました。相続放棄が成立すると、好子さんと息子の2人で遺産分割協議ができますので、大きな問題はなくなります。

 

法定割合という基準はありますが、現実的な遺産分割を考えると介護に貢献した妻が自宅と預金など全財産を相続するのが妥当なところです。

 

相続は法律だけでは解決しない現実があります。権利はあるものの、状況に応じて現実的な遺産分割をしていくのが望ましいといえます。

 

しかしながら、生前にチャンスがあったにも関わらず、何もできなかった司法書士には残念に思います。

 

 

※登場人物は仮名です。プライバシーに配慮し、実際の相談内容と変えている部分があります。

 

 

曽根 惠子
株式会社夢相続代表取締役
公認不動産コンサルティングマスター
相続対策専門士

 

◆相続対策専門士とは?◆

公益財団法人 不動産流通推進センター(旧 不動産流通近代化センター、retpc.jp)認定資格。国土交通大臣の登録を受け、不動産コンサルティングを円滑に行うために必要な知識及び技能に関する試験に合格し、宅建取引士・不動産鑑定士・一級建築士の資格を有する者が「公認 不動産コンサルティングマスター」と認定され、そのなかから相続に関する専門コースを修了したものが「相続対策専門士」として認定されます。相続対策専門士は、顧客のニーズを把握し、ワンストップで解決に導くための提案を行います。なお、資格は1年ごとの更新制で、業務を通じて更新要件を満たす必要があります。

 

「相続対策専門士」は問題解決の窓口となり、弁護士、税理士の業務につなげていく役割であり、業法に抵触する職務を担当することはありません。

 

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