「遺産4600万円」を遺すも〈72歳夫〉には先妻との子供が…「代償金250万円」を払わないとダメですか?要介護5の夫をずっと介護してきた〈62歳女性〉が無力感を覚えたワケ【相続の専門家が解説】

「遺産4600万円」を遺すも〈72歳夫〉には先妻との子供が…「代償金250万円」を払わないとダメですか?要介護5の夫をずっと介護してきた〈62歳女性〉が無力感を覚えたワケ【相続の専門家が解説】
(※写真はイメージです/PIXTA)

仕事もやめ、長らく自宅で一人で夫の介護に専念してきた好子さん(60代女性)。夫が亡くなり、司法書士に相談してみると、遺産は息子と、40年間一度も会っていない前妻との娘とで3分割するのが法律上の基本だと言って、背景を聞いてもらえず……。本記事では相続実務士である曽根惠子氏(株式会社夢相続代表取締役)が、好子さんの取れる相続対策について詳しく解説します。

司法書士の提案はあくまで「法律」優先で

夫が亡くなったあとも、引き続き同じ司法書士に依頼して、財産の目録を作ってもらっていました。夫の相続人は妻と子ども2人の3人で、基礎控除は4,800万円。夫の財産を確認してみると、自宅の土地建物が2,800万円、預金と株で1,800万円、合計4,600万円。相続税の申告は不要だとわかりました。

 

司法書士の遺産分割案の方針は、法定相続分が基本になるため「妻は自宅を、子供たちは預貯金・株などを現金化し均等に相続することを提案する」ということです。そうなると好子さんは、自宅は相続できるが、子ども2人に250万円ずつ、計500万円を代償金として払わないといけなくなります。

 

好子さんは、これからの老後生活を考えると、500万円を払うことには不安があります。なにより、長らく夫の介護は好子さんがひとりで担当し、仕事が忙しい息子には手伝ってもらえず、ましてや先妻の子は、40年以上も行き来すらしていないのです。

違和感の残る方針に納得できない好子さん

好子さんは、司法書士の分割案に違和感がありましたので、「夫からは全財産を相続していいと聞いているし、介護した寄与分があるので、財産全部を自分が相続したい」と主張しました。

 

けれども司法書士には、「妻の寄与分は認められないのがほとんど。法定相続分による分割でいきましょう」と言われてしまったのです。

 

「全部を妻に」となると、法定相続での配分にならないので、司法書士にはできないといいます。けれども、好子さんはまだ60代。これから20年、30年先の老後まで、安定した生活ができるのか、とても不安であると言います。また、先妻の子にはまだなにも知らせていないため、入り口はそこからになります。

先妻の子への通知

司法書士が、先妻の子の戸籍や住民票を取得していましたので、連絡をすることができる状況でした。

 

今回のように、先妻の子がいるも交流がなく、亡くなったことも知らせていない、また、遺言書がないので、遺産分割協議に協力をしてもらう必要があるといったご家庭は多数あり、私たちも何度もお手伝いをしてきました。

 

好子さんにも委託をいただき、まずは先妻の子に通知するところから始めました。相手があることなので、反応は切り出してみないとなんともわかりません。本当にケースバイですが、長年会ってもいない戸籍上の親の相続とは関わりたくないという方もいて、自ら相続放棄をされるケースもあります。

 

具体的には、次のような通知文を送って、理解や協力を得るようにします。

 

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