事例1:二世帯住宅は修羅場にもなる!?
姉妹夫婦同居の二世帯住宅(実家)で、父の面倒を見てきて
89歳の父親が亡くなったと、妹と2人で相談に来られた佐藤さん(59歳女性)。母親はすでに亡くなっており、佐藤さん家族と妹家族が二世帯住宅の実家で同居をしながら、父親の面倒を見てきたといいます。
もともとは両親が1階に住み、2階が佐藤さん夫婦とその子供2人の6人でスタートした二世帯住宅でした。ところが母親が先に亡くなって、1階は父親のひとり暮らしに。子どもたちも仕事の関係で独立してしまい、仕事をしている佐藤さん夫婦では父親の面倒を見ることが難しくなりました。
そこで55歳の専業主婦の妹に父親の世話をお願いする運びとなり、元々妹の住んでいた家は妹の子供夫婦に住まわせ、妹夫婦が佐藤さんの実家に引っ越すことで、父親の面倒を見るという生活が始まったのです。
預金は3,000万円、不動産評価額は6,000万円。どう分ける?
妹夫婦のお陰で、父親は不安なく老後の生活ができ、佐藤さん夫婦も今までのペースで生活ができ、うまくバランスが取れていると思っていました。父親は遺言書を残さずに亡くなりましたので、姉妹で遺産分割協議が必要です。
佐藤さんの考えは、姉妹で等分にということです。妹もそれについては異論がなく、3,000万円ほどの預金は解約して半分にすることはすんなり合意が得られました。
家は築30年程ながらまだしばらく住めるといいます。土地は50坪で、二つに分けると細長くなり、今の大きさの家は建ちません。評価は6,000万円ほどあり、現金の約2倍です。どちらかが不動産、どちらかが現金という分け方では、アンバランスになってしまいます。
実家を売りたい姉と売りたくない妹…
結果、現金を等分にしたように、実家を売って二等分にすることが現実的な選択肢ではということになりました。
ところが、ここから足並みがそろいません。夫が定年になり、庭の手入れがいらないマンションに住替えたいという佐藤さんと、まだ実家に住んでいたい妹の意見が違うのです。佐藤さんはすぐに売って住み替えたいのに、妹は1年とか3年では売却は考えられない、5年でも短いという意見なのです。ある日、佐藤さんが妹に「ねえ、そろそろ出ていってくれない?」と持ちかけたところ、妹は「私たち夫婦が引っ越してまで助けてあげたのにお姉ちゃんは勝手すぎる!」と激怒し、それ以来、姉妹の仲は険悪に……。
家を売却するには2人の合意がないと進みませんし、住んでいる妹家族が引っ越ししないと売れません。いずれにしても合意が必要で、どちらか一方で進めることはできません……。妹のものすごい剣幕に、姉も自分がいかに勝手なことを言っているかに気づき、2人で相談に来たというわけです。
合意書を作って財産を分ける期限を決めておく
そこで弊社が提案したのは、遺産分割協議書を作成するときに、合意書も作成して、実家を売却して財産を分ける期限を決めておくということです。
本来は、相続税の申告が終わり次第財産を分けるのが一般的なスケジュールですが、すぐに分けられない状況であれば、約束事を書類にして、それを目安に進めていくという方法です。
建物は老朽化してきますので、いずれかの時期に同じ問題が生じます。姉妹でルール作りをして分けていくことが必要でしょう。佐藤さん姉妹には、お二人の意見の間を取り、税金の特例が生かせる「相続後3年」を目安に売却されることをお勧めしました。現在、検討中の模様です。