父親が亡くなり、兄と妹と3人で相続手続きをしていた瑞希さん(52歳女性)。公正証書遺言を見つけたものの、その執行者は父親が生前取引していた「都市銀行」でした。遺産の8割が土地ということで途方に暮れる瑞希さん。本記事では相続実務士である曽根惠子氏(株式会社夢相続代表取締役)が相続対策について詳しく解説します。
父の遺言書の執行者は「都市銀行」
52歳の瑞希さんは、95歳でこの世を去ったお父様の相続で困っているということで相談に来ました。
現在、父親が亡くなって、相続人である兄と瑞希さん、妹の3人で相続の手続きをしているところです。
父が残した財産は相続税の申告が必要なものでした。兄から公正証書遺言があると知らされたのですが、それは父親が取引していた都市銀行が遺言執行者になっている内容だといいます。
父の財産は約7億円。相続税は2億円を超える金額で…
父親の財産は広い自宅と貸宅地で、土地が財産の8割を占めています。母親はすでに亡くなっていますので、配偶者の特例が使えず、また、同居する子どももなく、それぞれ自宅を所有していますので、居住用の小規模宅地等の特例も使えません。適用できるのは、貸宅地で貸付用の小規模宅地等の特例、200㎡まで50%減できる程度のものです。
しかしながら父の財産は約7億円、相続税は財産の30%、2億円を超える額になりそうということです。
相続税の申告に関しては、毎年の確定申告を担当していた税理士法人に依頼をしており、公正証書遺言を作成するときも、この税理士法人と銀行が中心になって進めたようです。
遺言書の証人になった銀行員2名はすでに退職!?
実家を維持したいという話は兄から言われたことですが、公正証書遺言の執行者になっている銀行からは特に詳しい説明はありません。また、遺言書の証人になった行員2名の女性はすでに退職していないということで、取引のある支店の担当者が対応しています。
相続税の申告を担当する税理士法人からは、1人7,000万円程度の相続税の納税が必要だという説明を受けています。
貸宅地は3人に適度に割り振っての相続ですので、個々に売却をして、納税資金に充てたいと思うのですが、具体的に今後どのようにしていけばよいか、詳しい説明もなく、不安に思っているということです。
株式会社夢相続代表取締役
公認不動産コンサルティングマスター
相続対策専門士
京都府立大学女子短期大学卒。PHP研究所勤務後、1987年に不動産コンサルティング会社を創業。土地活用提案、賃貸管理業務を行う中で相続対策事業を開始。2001年に相続対策の専門会社として夢相続を分社。相続実務士の創始者として1万4400件の相続相談に対処。弁護士、税理士、司法書士、不動産鑑定士など相続に関わる専門家と提携し、感情面、経済面、収益面に配慮した「オーダーメード相続」を提案、サポートしている。
著書65冊累計58万部、TV・ラジオ出演127回、新聞・雑誌掲載810回、セミナー登壇578回を数える。著書に、『図解でわかる 相続発生後でも間に合う完全節税マニュアル 改訂新版』(幻冬舎メディアコンサルティング)、『図解90分でわかる!相続実務士が解決!財産を減らさない相続対策』(クロスメディア・パブリッシング)、『図解 身内が亡くなった後の手続きがすべてわかる本 2021年版 (別冊ESSE) 』(扶桑社)など多数。
◆相続対策専門士とは?◆
公益財団法人 不動産流通推進センター(旧 不動産流通近代化センター、retpc.jp) 認定資格。国土交通大臣の登録を受け、不動産コンサルティングを円滑に行うために必要な知識及び技能に関する試験に合格し、宅建取引士・不動産鑑定士・一級建築士の資格を有する者が「公認 不動産コンサルティングマスター」と認定され、そのなかから相続に関する専門コースを修了したものが「相続対策専門士」として認定されます。相続対策専門士は、顧客のニーズを把握し、ワンストップで解決に導くための提案を行います。なお、資格は1年ごとの更新制で、業務を通じて更新要件を満たす必要があります。
「相続対策専門士」は問題解決の窓口となり、弁護士、税理士の業務につなげていく役割であり、業法に抵触する職務を担当することはありません。
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