仕事もやめ、長らく自宅で一人で夫の介護に専念してきた好子さん(60代女性)。夫が亡くなり、司法書士に相談してみると、遺産は息子と、40年間一度も会っていない前妻との娘とで3分割するのが法律上の基本だと言って、背景を聞いてもらえず……。本記事では相続実務士である曽根惠子氏(株式会社夢相続代表取締役)が、好子さんの取れる相続対策について詳しく解説します。
介護してきた夫が突然亡くなって…
しばらく自宅で介護をしてきた夫が突然亡くなってしまい、息子さんと二人で相談に来られた好子さん(62歳女性)。
好子さんの夫は、65歳のとき、仕事中に倒れて救急搬送。命はとりとめたものの半身不随となってしまい、要介護5に。以降、好子さんが仕事も辞めて、自宅で介護をしてきたといいます。
夫は自宅療養になってからも、病院で定期健診を受けていました。今年の定期検査の結果は良好で、心配はないと太鼓判を押してもらったばかりでしたが、なんと検査の翌朝、突然亡くなってしまったのです。
その後、司法書士に依頼はしたものの、不安が生じ、今回、好子さんと息子さんのお2人で相談に来られました。
10歳年上の夫とは再婚で、先妻との間に娘がいる
好子さんと夫は、今からおよそ40年前に結婚しています。好子さんは初婚で一人息子に恵まれ、10歳年上の夫は再婚で、先妻との間にもう一人娘がいるとのことです。
当時上場企業に勤務していた夫は、転勤先の同僚と結婚し娘が生まれたものの、2年で協議離婚したそうです。
先妻との間の娘は現在40代になりますが、夫は離婚してからの40年間、全く会っていないといいます。当然ながら、好子さんや息子も先妻の子とは会ったこともなく、どこに住んでいるかもわからない状態です。
司法書士に相談していた内容
好子さんは昨年知人の紹介で、夫のことを司法書士に相談していました。介護が長くなり、70代になった夫に認知症の症状も出てきたため、これからのことが不安になり、何をすればいいのかアドバイスをもらいたかったそうです。先妻の子がいることは司法書士にも説明済です。
息子さんは、家から通えない距離にある大学に入ったことをきっかけに実家から離れて暮らしており、社会人になって結婚した現在では、職場の近くにマンションを買っていますので、父親の介護に協力できる余裕はなかったようです。よって、日々の介護は好子さんがひとりで引き受けており、夫自身も、好子さんに負担をかけていることは承知の上で「自分の財産はすべて好子さんに渡す」と言ってくれていたそうです。
そのような好子さんの貢献度が明らかな状況で、司法書士も、自宅のおしどり贈与や遺言書などの方法をサポートしてくれるのかと期待していたものの、話がなかなか進まらず、今回弊社に相談に来られたようです。
株式会社夢相続代表取締役
公認不動産コンサルティングマスター
相続対策専門士
京都府立大学女子短期大学卒。PHP研究所勤務後、1987年に不動産コンサルティング会社を創業。土地活用提案、賃貸管理業務を行う中で相続対策事業を開始。2001年に相続対策の専門会社として夢相続を分社。相続実務士の創始者として1万4400件の相続相談に対処。弁護士、税理士、司法書士、不動産鑑定士など相続に関わる専門家と提携し、感情面、経済面、収益面に配慮した「オーダーメード相続」を提案、サポートしている。
著書65冊累計58万部、TV・ラジオ出演127回、新聞・雑誌掲載810回、セミナー登壇578回を数える。著書に、『図解でわかる 相続発生後でも間に合う完全節税マニュアル 改訂新版』(幻冬舎メディアコンサルティング)、『図解90分でわかる!相続実務士が解決!財産を減らさない相続対策』(クロスメディア・パブリッシング)、『図解 身内が亡くなった後の手続きがすべてわかる本 2021年版 (別冊ESSE) 』(扶桑社)など多数。
◆相続対策専門士とは?◆
公益財団法人 不動産流通推進センター(旧 不動産流通近代化センター、retpc.jp) 認定資格。国土交通大臣の登録を受け、不動産コンサルティングを円滑に行うために必要な知識及び技能に関する試験に合格し、宅建取引士・不動産鑑定士・一級建築士の資格を有する者が「公認 不動産コンサルティングマスター」と認定され、そのなかから相続に関する専門コースを修了したものが「相続対策専門士」として認定されます。相続対策専門士は、顧客のニーズを把握し、ワンストップで解決に導くための提案を行います。なお、資格は1年ごとの更新制で、業務を通じて更新要件を満たす必要があります。
「相続対策専門士」は問題解決の窓口となり、弁護士、税理士の業務につなげていく役割であり、業法に抵触する職務を担当することはありません。
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