「好きなことは老後にやればいい」…40年以上、節約を続けた人生
田中悦子さん(仮名・68歳)は、首都圏近郊で夫と二人暮らしをしています。夫はメーカー勤務で定年まで勤め上げ、現役時代の年収はピーク時でも700万円台半ば。悦子さん自身も子育てが落ち着いてからはスーパーのパートなどで働き、年収は100万~150万円ほど。安定はしていましたが、高収入というほどでもありませんでした。
それでも夫婦は、退職時点で現預金5,600万円を築きました。その秘訣は「ただひたすら使わなかったこと」です。
「老後に困るくらいなら、今は我慢すればいい。その一心でした」
悦子さんはそう振り返ります。その我慢は並大抵ではありませんでした。
「我が家に贅沢は不要」が口癖…家族まで巻き込んだ徹底節約
結婚したころから、家計簿は1円単位。スーパーは閉店前の値引きシールが貼られる時間を狙い、電気はこまめに消す。冷暖房は本当に我慢できなくなるまでつけない。外食は年に数回。誕生日もクリスマスも、特別なごちそうはありません。
夫のお小遣いは月3万円。
「足りない? 飲み会の参加って本当に必要なの?」
そんな言葉を投げかけたのは、一度ではありません。子どもたちにも、「うちはお金がないから」が決まり文句。実際には生活に困るほどではありませんでしたが、悦子さんは財布のひもを緩めませんでした。
旅行は基本日帰り。温泉が好きでしたが、退職したら夫婦でゆっくり行けばいいと先送りしました。「若いうちは働く時期。遊ぶのは老後で十分」――その積み重ねが、5,600万円という資産につながったのは確かです。
夫は定年退職の日、初めて通帳を見て言葉を失ったといいます。
「こんなにあったのか? お前、すごいな……」
長年「うちには余裕がない」と聞かされ続けていた夫は、本当にそう信じ込んでいたのです。
