父親が亡くなって相続手続きが必要
景子さん(45歳)が母親(75歳)と兄(48歳)の3人で相談に来られました。3ヶ月前に父親が亡くなり、これから相続の手続きをするとのこと。いままでに税務署や行政の法律相談などに出向いていろいろとアドバイスをしてもらったといいます。3人で税理士にも相談に行ったのですが、高圧的な態度で具体的なアドバイスがなく、依頼しなかったといいます。
結果、どこに頼むか決めていないこと、それぞれの理解の仕方が違うのか、3人で話をしていてもまとまらないとのことがあり、3人そろって相談に来られたという状況でした。
父親は遺言書を残さなかった
父親は80歳で亡くなったそうです。病気で入院していたということではなく、元気で普通に生活していたのに、ゴルフ場にでかけたときに心不全で急逝したということです。
中堅企業の役員をしていて65歳でリタイアしたときは退職金も出たと聞いています。兄と景子さんは大学まで出してもらいましたが、母親も子育てがひと段落したてからは仕事に復帰して60歳まで働いていましたので、生活には比較的、余裕があったと言えます。
夫婦でゴルフや旅行にでかける生活を楽しんでいましたので、相続まではまだ間があると何も対策はせず、遺言書もありませんでした。
遺言書がない場合は、相続人3人で遺産分割協議をして財産の分け方を決める必要があります。法定割合は母親が2分の1、兄と景子さんが4分の1ずつとなります。
父親の財産はマンションと預貯金、株式
父親の財産は自宅マンションと預金、株式です。マンションに両親が2人で暮らしていましたが、現在は母親が一人暮らしになりました。景子さんと兄は結婚して自宅を離れており、すでに自宅を保有しています。マンションの相続評価は3,000万円と確認できました。流通している時価では8,000万円程度です。
金融資産は預金が2,000万円、配当がある上場株が4,000万円、母親が受取人となっている生命保険が1,000万円ありました。
財産の合計はちょうど1億円になります。ただし、生命保険は母親が受取人となっていますので、遺産分割からは除外されます。また相続税でも生命保険の非課税枠1,500万円の範囲内です。よって遺産分割の対象の財産は9,000万円となりますので、母親が4,500万円、兄と景子さんが2,250万円です。相続税の税率は15%で480万円と計算できました。
自宅マンションを相続する母親が代償金を払わなくてはいけない?
現状で考えると70代の母親は当分の間は、自宅マンションで一人暮らしをするといいます。景子さんも兄も自分の家は購入していますので、自宅マンションで母親と同居する見込みはありません。
現実的な分け方とすれば自宅マンションは母親が相続し、さらに預金と株式は母親と兄、景子さんが分け合うとなります。兄も景子さんもそれでよいと思っているので、遺産分割はスムーズに決まるはずでした。
ところが、税理士から「自宅を相続する人が他の相続人に対し、代償金を払わなければならない」とアドバイスをされていた母親が感情的になることが出てきたといいます。景子さんが「母の様子がおかしいんです」とポロッとこぼしたのが印象的でした。