相続人の子どもが相続放棄をした場合、相続人の子である孫に相続の権利が回っていくように思いますが、実際には、相続放棄した相続人の子どもに相続権はありません。子どもを飛ばして孫に相続してもらうには、一体どうすればいいのでしょうか。本記事では、子をとばして孫に相続させる方法について、相続実務士である曽根惠子氏(株式会社夢相続代表取締役)が解説します。
相続人は子ども2人
95歳の祖母の相続対策のアドバイスをしてもらいたいと33歳の香菜さんが相談に来られました。祖母の相続人は香菜さんの母親と叔母の2人。2人とも嫁いでいて、祖母は一人暮らしをしています。
香菜さん家族は同じ市内に住んでいるので、母親と香菜さんと妹(30歳)で毎日、祖母の家に通って食事の用意や身の回りの世話をしています。叔母は他県に嫁いだため、頻繁には来られず、香菜さん家族が担当しているといいます。祖母が95歳、母親と叔母も70代となり、相続が気になって、香菜さんが相談に来られました。
祖父は農家の土地持ち資産家
10年前に亡くなった祖父は農家の長男で、建築会社に勤ながら休日は田畑の維持のために農業も継続していました。農業は自家消費程度でしたが、農地として維持することで固定資産税は農地並みとなり、多少なりとも固定資産税の負担は軽減されています。農家住宅となる実家の土地は500坪あり、祖母の一人暮らしでは広すぎる状況です。
他の財産は駐車場、アパート、貸し宅地があり、賃貸収入もありました。祖父の相続のときは広い自宅と貸宅地は祖母が相続し、駐車場、アパートは母親と叔母が一つずつ相続しましたので、ほぼ法定割合となっています。
二次相続の節税対策が必要
祖父の相続税の申告については、自宅の土地評価を下げて負担を減らして、節税できました。それでも財産は約5億円。相続税は1億3000万円。配偶者の税額軽減により、祖母には納税はなかったということで、やれやれとひと段落されたようです。香菜さんの母親と叔母には相続税が課税されましたが、それ以上の預金が残っていて、納税は無理なくできたのでした。
二次相続を考えるとまた5,000万円程度の相続税となることが想定されましたので、祖母の節税対策をいくつかご提案しました。けれども祖母、母親、叔母には危機感がなく、あっという間に5年が過ぎたのです。
株式会社夢相続代表取締役
公認不動産コンサルティングマスター
相続対策専門士
京都府立大学女子短期大学卒。PHP研究所勤務後、1987年に不動産コンサルティング会社を創業。土地活用提案、賃貸管理業務を行う中で相続対策事業を開始。2001年に相続対策の専門会社として夢相続を分社。相続実務士の創始者として1万4400件の相続相談に対処。弁護士、税理士、司法書士、不動産鑑定士など相続に関わる専門家と提携し、感情面、経済面、収益面に配慮した「オーダーメード相続」を提案、サポートしている。
著書65冊累計58万部、TV・ラジオ出演127回、新聞・雑誌掲載810回、セミナー登壇578回を数える。著書に、『図解でわかる 相続発生後でも間に合う完全節税マニュアル 改訂新版』(幻冬舎メディアコンサルティング)、『図解90分でわかる!相続実務士が解決!財産を減らさない相続対策』(クロスメディア・パブリッシング)、『図解 身内が亡くなった後の手続きがすべてわかる本 2021年版 (別冊ESSE) 』(扶桑社)など多数。
◆相続対策専門士とは?◆
公益財団法人 不動産流通推進センター(旧 不動産流通近代化センター、retpc.jp) 認定資格。国土交通大臣の登録を受け、不動産コンサルティングを円滑に行うために必要な知識及び技能に関する試験に合格し、宅建取引士・不動産鑑定士・一級建築士の資格を有する者が「公認 不動産コンサルティングマスター」と認定され、そのなかから相続に関する専門コースを修了したものが「相続対策専門士」として認定されます。相続対策専門士は、顧客のニーズを把握し、ワンストップで解決に導くための提案を行います。なお、資格は1年ごとの更新制で、業務を通じて更新要件を満たす必要があります。
「相続対策専門士」は問題解決の窓口となり、弁護士、税理士の業務につなげていく役割であり、業法に抵触する職務を担当することはありません。
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