3ヶ月前に父親が急死した45歳の景子さん。母と兄の3人で相続の手続きをすることになったのですが、相続の話になると母親が何やら感情的になることが増えてきました。「このままでは家族がバラバラになってしまう」と危機感を感じた景子さんが相談に訪れました。本記事では、相続の代償金について、相続実務士である曽根惠子氏(株式会社夢相続代表取締役)が解説します。
代償金は相続財産の中からでも払える
母親は、自分が自宅マンションを相続すると、2人の子どもたちに代償金を払い続けなければならないと理解しているといいます。しかし「そんなに払えるお金はない」というのが母親の本音なのです。
亡くなった父親の財産は次の通りです。相続評価3,000万円の自宅マンション、金融資産(預金2,000万円)、配当がある上場株4,000万円。不動産よりも金融資産のほうが多いのです。いずれにしても母親が自分のお金で代償金を払う必要がないのは明白です。それでも母親が「代償金」を払うことになるのは、「全財産を配偶者が相続する」として、いったん、すべての財産を相続する場合では、母親が子どもたちに「代償金を払う」という形を取るからです。
しかし、相続した財産の中に預金や株式などの金融資産があるので、自分のお金を出すことはなく、代償金が払える状況が見えています。
このような「代償金」についての説明をすると、ようやく母親も理解ができたようです。税理士の説明不足だったのか、母親の解釈が違ったのか、わかりませんが、「代償金」の決め方がネックになっていた遺産分割は進められることになり、母親の顔もパッと明るくなりました。私としては「よくぞ3人で相談に来てくれた」と景子さんに拍手を送りたくなりました。
遺産分割の注意点とアドバイス
あらためて遺産分割について、整理しておきましょう。
相続人が複数いるときは、「だれがどの財産を、いくらくらいの割合で相続するか」といった話し合いをして、財産の分け方を決めなければなりません。財産の分配を「遺産分割」といいます。最初に、相続人を確定し、財産を確定して、財産目録を作成します。遺言がある場合は優先しますが、ない場合は、相続人全員が納得すれば、どういうふうに分けてもかまいません。必ずしも法定相続分どおりに分ける必要はありません。
財産は、被相続人の死と同時に自動的に相続人に移転します。しかし、そのままでは、相続人達は、相続財産全体を共有財産として所有しているにすぎません。個々の財産を各相続人の所有とするためには「遺産分割」をして、名義を隔相続人のものに変える手続きが必要になります。遺産の分割には決まった期限はありませんが、相続税の申告までに遺産分割が決まらないと配偶者の税額軽減の特例が受けられないことがあり、そのころまでに分割しておいたほうがいいでしょう。
株式会社夢相続代表取締役
公認不動産コンサルティングマスター
相続対策専門士
相続実務士®
株式会社夢相続 代表取締役
一般社団法人相続実務協会 代表理事
一般社団法人首都圏不動産共創協会 理事
一般社団法人不動産女性塾 理事
京都府立大学女子短期大学卒。PHP研究所勤務後、1987年に不動産コンサルティング会社を創業。土地活用提案、賃貸管理業務を行う中で相続対策事業を開始。2001年に相続対策の専門会社として夢相続を分社。相続実務士の創始者として1万4400件の相続相談に対処。弁護士、税理士、司法書士、不動産鑑定士など相続に関わる専門家と提携し、感情面、経済面、収益面に配慮した「オーダーメード相続」を提案、サポートしている。
著書86冊累計81万部、TV・ラジオ出演358回、新聞・雑誌掲載1092回、セミナー登壇677回を数える。著書に、『図解でわかる 相続発生後でも間に合う完全節税マニュアル 改訂新版』(幻冬舎メディアコンサルティング)、『図解90分でわかる!相続実務士が解決!財産を減らさない相続対策』(クロスメディア・パブリッシング)、『図解 身内が亡くなった後の手続きがすべてわかる本 2025年版 』(扶桑社)など多数。
◆相続対策専門士とは?◆
公益財団法人 不動産流通推進センター(旧 不動産流通近代化センター、retpc.jp) 認定資格。国土交通大臣の登録を受け、不動産コンサルティングを円滑に行うために必要な知識及び技能に関する試験に合格し、宅建取引士・不動産鑑定士・一級建築士の資格を有する者が「公認 不動産コンサルティングマスター」と認定され、そのなかから相続に関する専門コースを修了したものが「相続対策専門士」として認定されます。相続対策専門士は、顧客のニーズを把握し、ワンストップで解決に導くための提案を行います。なお、資格は1年ごとの更新制で、業務を通じて更新要件を満たす必要があります。
「相続対策専門士」は問題解決の窓口となり、弁護士、税理士の業務につなげていく役割であり、業法に抵触する職務を担当することはありません。
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