相続税はかからないけれど、借入金2億円ごと娘に相続…悩みに悩んだ55歳・会社経営者が〈不動産整理〉を決意したワケ【相続の専門家の助言】

相続税はかからないけれど、借入金2億円ごと娘に相続…悩みに悩んだ55歳・会社経営者が〈不動産整理〉を決意したワケ【相続の専門家の助言】
(※写真はイメージです/PIXTA)

相続税はかかりませんが、2億円の借入ごと資産を相続するとなると不安が残ります。音楽関連の会社を経営する55歳の田中さん(仮名)は、不動産賃貸も手がけていますが、借入の返済は20年以上先まで続く見通しです。専業主婦の妻と10代の娘に、このまま資産を引き継がせてよいのか悩んでいます。そんな田中さんにアドバイスした内容は? 相続実務士の曽根惠子氏(株式会社夢相続代表取締役)が解説します。

自営+賃貸事業

田中さんは55歳。妻(50代)と娘(10代)が一人います。音楽関係の仕事をしており、15年ほど前に独立して会社経営をしてきました。


合わせて数年前から不動産の賃貸事業も始めています。取引銀行の担当者から、不動産を購入するなら融資をすると勧められて5物件を所有して、運営しています。

ほどなく60歳になるため、これからどうすればいいかのご相談がありました。

 

借入金2億円、相続税はかからない

田中さんの財産を評価すると約2億円で、ほぼ同額の借入金があるため、相続税はかかりません。相続税の節税はできていると言えますが、将来の課題は見えてきます。

借入金の返済期間はまだ20年以上あるため、このままでは娘が相続することになりますが、まだ、学生のため、相続や賃貸事業への意識は皆無。妻は専業主婦ですから、娘と同様で、関心がないといいます。


現在は家賃収入から借入返済ができているため、問題はないように思えますが、これから修繕費もかかり、賃貸状況も変わるかもしれません。借入が多いのは不安要素と言えます。

 

賃貸事業の法人化は必要?

田中さんからの質問の1つに「賃貸事業を法人化したほうがいいか?」ということがありました。現在は個人所有の不動産ですので、個人事業としているといいます。

 

法人化のメリットは配偶者や子供に役員報酬を渡して所得を分散することで、判断の目安となる家賃収入は年間1,000万円以上とされています。田中さんの家賃収入は800万円ほどで、子どもは未成年ということから、法人化するメリットは少ないとアドバイスしました。

 

これからは不動産の整理

相続する側を考えるとなるべく借り入れは少ないほうが良いと言えます。


不動産が古くなってくればなおさらで、さらに遠い物件も所有されていますので、これから田中さんが取り組まないといけないことは不動産の入れ替えだとアドバイスしました。


できれば借り入れのあるものから売却し、借り入れは返済、残りで買えるものを近くで買う。このような対策をすることで次世代も相続しやすくなります。

 

賃貸事業は正解!

田中さんの本業はコロナの影響もあり、業績が落ち込んだといいますが、家賃収入があったのでなんとか維持できているといいます。借入はあるが、始めておいて良かったとおっしゃっていました。


相続対策でも、日常の生活でも不動産から家賃収入が得られることはメリットが大きいと言えます。

 

 

相続実務士のアドバイス

●できる対策

遠くの不動産はできるだけ近くに買い替える。 借り入れのある不動産を売却、返済して、残りで別の不動産を購入する。

●注意ポイント

家賃収入が1,000万円以下の場合は、法人で賃貸事業をするメリットは少ない。
決算や保険などの手続きが煩雑になることもあるため、個人事業のままでよいこともある。

 

 

 

曽根 惠子
公認不動産コンサルティングマスター
相続対策専門士
相続実務士®

株式会社夢相続 代表取締役

 

◆相続対策専門士とは?◆

公益財団法人 不動産流通推進センター(旧 不動産流通近代化センター、retpc.jp)認定資格。国土交通大臣の登録を受け、不動産コンサルティングを円滑に行うために必要な知識及び技能に関する試験に合格し、宅建取引士・不動産鑑定士・一級建築士の資格を有する者が「公認 不動産コンサルティングマスター」と認定され、そのなかから相続に関する専門コースを修了したものが「相続対策専門士」として認定されます。相続対策専門士は、顧客のニーズを把握し、ワンストップで解決に導くための提案を行います。なお、資格は1年ごとの更新制で、業務を通じて更新要件を満たす必要があります。

 

「相続対策専門士」は問題解決の窓口となり、弁護士、税理士の業務につなげていく役割であり、業法に抵触する職務を担当することはありません。

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