築70年の実家にお住いの恒夫さん。ついにお風呂が使えなくなってしまい工事費の見積もりを頼んだところ、200万円かかるだけでなくほかの場所もリフォームが必要になることは目に見えています。いっそのこと建て替えか住み替えをしようかと悩み、お兄さんと一緒に相談に訪れました。本記事では、相続した家の売却や資産組替ついて、相続実務士である曽根惠子氏(株式会社夢相続代表取締役)が解説します。
ずっと実家住まいのおひとり様
65歳の恒夫さんが相談に来られました。相続した実家は恒夫さんが生まれる前の昭和20年代に建築さた築70年の家。建て増ししたり、改築したりしながら住んできたのですが、いよいよお風呂が使えなくなり、ガス業者さんに見てもらうと「取り換えが必要だが、風呂釜だけでなく、浴室全体の工事をしないとユニットバスが入らないため、工事費は200万円ほどかかる」と言われたのです。
お風呂を直しても、次はキッチンや洗面所もリフォームが必要になることは目に見えています。
とりあえずのアパート生活
決断がつかないまま、日々のお風呂が使えない不便さを解消するため、たまたま空室があった隣のアパートに仮住まいをするようにしたそう。
日々の生活はそれで続けているものの、自宅をどうしようかと思い、アドバイスをしてもらいたいと、兄(70代)と一緒に相談に来られました。恒夫さんは二人兄弟。兄は長男ですが、20代で結婚して家を離れました。実家には祖父母と両親、孫の恒夫さんで暮らしてきました。
土地は祖父の代からの借地で、ずっと地代を払ってきましたが、地主さんから「相続税を支払うために買ってくれないか」という申し出があり、父親が亡くなった後、母親が底地を買い取ったという経緯があります。
昨年、母親が亡くなったため、ずっと同居してきた恒夫さんが相続しました。
相続税はかからなかった
自宅の土地は55坪で路線価は38万円、評価額は6,900万円でした。建物や預金を合わせて、母親の財産は7,500万円。基礎控除は相続人2人なので、4,200万円です。兄は自宅を所有しているので、実家は同居してきた恒夫さんが相続することで合意してくれました。
相続税の申告は必要でしたが、同居する恒夫さんが相続することで小規模宅地等の特例が使えるため、自宅の土地評価が5,520万円減額されることで、基礎控除以内と財産となり、相続税はかからなかったのです。
兄とも遺産分割協議も円満に済み、不動産の名義も相続登記も終わり、ひと段落したところだと言います。
株式会社夢相続代表取締役
公認不動産コンサルティングマスター
相続対策専門士
京都府立大学女子短期大学卒。PHP研究所勤務後、1987年に不動産コンサルティング会社を創業。土地活用提案、賃貸管理業務を行う中で相続対策事業を開始。2001年に相続対策の専門会社として夢相続を分社。相続実務士の創始者として1万4400件の相続相談に対処。弁護士、税理士、司法書士、不動産鑑定士など相続に関わる専門家と提携し、感情面、経済面、収益面に配慮した「オーダーメード相続」を提案、サポートしている。
著書65冊累計58万部、TV・ラジオ出演127回、新聞・雑誌掲載810回、セミナー登壇578回を数える。著書に、『図解でわかる 相続発生後でも間に合う完全節税マニュアル 改訂新版』(幻冬舎メディアコンサルティング)、『図解90分でわかる!相続実務士が解決!財産を減らさない相続対策』(クロスメディア・パブリッシング)、『図解 身内が亡くなった後の手続きがすべてわかる本 2021年版 (別冊ESSE) 』(扶桑社)など多数。
◆相続対策専門士とは?◆
公益財団法人 不動産流通推進センター(旧 不動産流通近代化センター、retpc.jp) 認定資格。国土交通大臣の登録を受け、不動産コンサルティングを円滑に行うために必要な知識及び技能に関する試験に合格し、宅建取引士・不動産鑑定士・一級建築士の資格を有する者が「公認 不動産コンサルティングマスター」と認定され、そのなかから相続に関する専門コースを修了したものが「相続対策専門士」として認定されます。相続対策専門士は、顧客のニーズを把握し、ワンストップで解決に導くための提案を行います。なお、資格は1年ごとの更新制で、業務を通じて更新要件を満たす必要があります。
「相続対策専門士」は問題解決の窓口となり、弁護士、税理士の業務につなげていく役割であり、業法に抵触する職務を担当することはありません。
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