相続人の子どもが相続放棄をした場合、相続人の子である孫に相続の権利が回っていくように思いますが、実際には、相続放棄した相続人の子どもに相続権はありません。子どもを飛ばして孫に相続してもらうには、一体どうすればいいのでしょうか。本記事では、子をとばして孫に相続させる方法について、相続実務士である曽根惠子氏(株式会社夢相続代表取締役)が解説します。
二次相続対策が進まなかった理由
祖母は元気で、自宅で生活できているとはいえ、90歳を過ぎていて、いつ、相続になるかわかりません。母親と叔母は70代。2人とも専業主婦でしたので、財産にはこだわりがなく、それだけに祖母の二次相続についてもいくつか提案をしてきました。
ところが、本人は90代に突入。祖父はアパートを建てたり、駐車場にしたりして、多少なりとも節税対策に取り組んできましたが、祖母は、祖父の財産を引き継いだままで、高齢になるとなおさら現状維持となりました。祖母の代わりに母親と叔母が祖母の背中を押さないといけなかったのですが、2人とも財産のことには関心がないのが本音のようで、結果、何もしなかったといいます。
孫が節税対策の窓口になる
ある日、香菜さんから連絡がありました。「祖母が体調を崩し、入院することになった」といいます。医者からは高齢なので万が一のこともあるかもしれないと言われてしまい、母親と叔母が慌てて相続のことを考えないといけないが、自分たちではわからないので香菜さんにやってもらいたいと話があったのです。叔母は結婚していますが子どもがいないため、孫は香菜さんと妹の2人です。
香菜さんはFPを持つ保険会社の社員ですので、数字には強く、相続の全体像も知識として持っています。結婚して実家住まいで、祖母にも毎日のように会っていますし、子どもの頃から自分の家のように出入りしてきた祖父母の家には愛着があり、祖母や母親、叔母には安心してもらいたいという気持ちから、祖母の生前対策の窓口になろうと思ったと言います。
子どもは飛ばして孫が相続?
祖母、母親、叔母、香菜さん、妹の計5人で話し合いをしたところ、全員の総意で祖母の家は香菜さんに継いでもらいたいとなり、香菜さんも自分が担当すると方向性の合意はできました。そして、母親も叔母も、祖父の時にアパートや駐車場や預金を相続していたため「これ以上はいらない」と主張。香菜さんと妹で祖母の家を引き受けてほしいということでした。
そこで、香菜さん家族は、祖母の相続人である長女(母親)と次女(叔母)に相続放棄をしてもらい、香菜さんと妹が祖母の相続人になって手続きを進めたいというのです。
株式会社夢相続代表取締役
公認不動産コンサルティングマスター
相続対策専門士
京都府立大学女子短期大学卒。PHP研究所勤務後、1987年に不動産コンサルティング会社を創業。土地活用提案、賃貸管理業務を行う中で相続対策事業を開始。2001年に相続対策の専門会社として夢相続を分社。相続実務士の創始者として1万4400件の相続相談に対処。弁護士、税理士、司法書士、不動産鑑定士など相続に関わる専門家と提携し、感情面、経済面、収益面に配慮した「オーダーメード相続」を提案、サポートしている。
著書65冊累計58万部、TV・ラジオ出演127回、新聞・雑誌掲載810回、セミナー登壇578回を数える。著書に、『図解でわかる 相続発生後でも間に合う完全節税マニュアル 改訂新版』(幻冬舎メディアコンサルティング)、『図解90分でわかる!相続実務士が解決!財産を減らさない相続対策』(クロスメディア・パブリッシング)、『図解 身内が亡くなった後の手続きがすべてわかる本 2021年版 (別冊ESSE) 』(扶桑社)など多数。
◆相続対策専門士とは?◆
公益財団法人 不動産流通推進センター(旧 不動産流通近代化センター、retpc.jp) 認定資格。国土交通大臣の登録を受け、不動産コンサルティングを円滑に行うために必要な知識及び技能に関する試験に合格し、宅建取引士・不動産鑑定士・一級建築士の資格を有する者が「公認 不動産コンサルティングマスター」と認定され、そのなかから相続に関する専門コースを修了したものが「相続対策専門士」として認定されます。相続対策専門士は、顧客のニーズを把握し、ワンストップで解決に導くための提案を行います。なお、資格は1年ごとの更新制で、業務を通じて更新要件を満たす必要があります。
「相続対策専門士」は問題解決の窓口となり、弁護士、税理士の業務につなげていく役割であり、業法に抵触する職務を担当することはありません。
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