20年前に父が亡くなり、不仲な弟と難航しながらも無事遺産分割協議をして、貸し駐車場になって55歳の真美さん。20年の間、増額していく固定資産税に耐えながらも、父が苦労して残してきた土地を守ろうと、必死に駐車場の貸し出しを行ってきた真美さんでしたが、ついにその年間収入のおよそ半額が固定資産税に取られてしまうようになってから、相談に来られました。本記事では、賃貸住宅を建てるなど、土地を保有しながら固定資産税を減額する工夫について、相続実務士である曽根惠子氏(株式会社夢相続代表取締役)が解説します。
父親から220坪の土地を相続した
真美さん(55)の父親が亡くなったのは、20年前。父親の財産は10億円を超えていましたが、そのほとんどが土地で、アパートを建てたり、店舗を建てたりして賃貸事業をしていました。
長女の真美さんは、嫁いで実家を離れていましたが、父親が守ってきた土地は5つ下の弟に任せるだけでなく、自分でも相続して守っていきたいという思いで、220坪の土地を希望して相続しました。
賃料の駐車料金の4.3ヶ月分は、固定資産税(年間160万円)の支払いに取られてしまう
それから20年。その土地は、隣接する店舗を運営する法人に駐車場として一括貸しています。駐車場の月額利用料は37万円なのですが、固定資産税は年間160万円。実に、駐車料金の4.3ヶ月分が固定資産税の支払いに取られてしまうのです。
さらに今年、3年毎の固定資産税更改の年にあたり、年額2.7万円も増額されました。
この、固定資産税と賃料のバランスについて、どのように対処するのがよいかご相談いただきました。まず、今回の固定資産税の増額分については、駐車料金を改定し、借主の法人に負担してもらうようアドバイスしました。
ちなみに父親の相続時のいきさつは?
真美さんの父親は代々地主さんで、貸家や貸店舗を所有する不動産賃貸業をしいいました。真美さんの生みの母親は若くして亡くなったので、その後、現在の母が後妻として来ました。真美さんと弟が幼い頃のことだったので、育ててくれたことを感謝しているとのこと。
父親が元気なうちは、家の一切は父が仕切っていましたが、晩年は、高齢になったことから、賃貸業を弟に任せるようになっていました。それまで会社務めをしていた弟も、父親の後を継ぐ名目で会社を辞め、父の跡継ぎとして、不動産賃貸業の会社に入社。現在は、社長になっています。
そのような状況の中、父が亡くなったのですが、遺言書がなかったので、遺産分割協議をする際、不協和音が響きました。真美さんはすでに嫁いだ立場で、相続人は実家に住む母親と弟の3人です。母親は一緒に住む弟夫婦に気兼ねがあるのか、相続の手続きを仕切ったのは、弟だったのです。
株式会社夢相続代表取締役
公認不動産コンサルティングマスター
相続対策専門士
京都府立大学女子短期大学卒。PHP研究所勤務後、1987年に不動産コンサルティング会社を創業。土地活用提案、賃貸管理業務を行う中で相続対策事業を開始。2001年に相続対策の専門会社として夢相続を分社。相続実務士の創始者として1万4400件の相続相談に対処。弁護士、税理士、司法書士、不動産鑑定士など相続に関わる専門家と提携し、感情面、経済面、収益面に配慮した「オーダーメード相続」を提案、サポートしている。
著書65冊累計58万部、TV・ラジオ出演127回、新聞・雑誌掲載810回、セミナー登壇578回を数える。著書に、『図解でわかる 相続発生後でも間に合う完全節税マニュアル 改訂新版』(幻冬舎メディアコンサルティング)、『図解90分でわかる!相続実務士が解決!財産を減らさない相続対策』(クロスメディア・パブリッシング)、『図解 身内が亡くなった後の手続きがすべてわかる本 2021年版 (別冊ESSE) 』(扶桑社)など多数。
◆相続対策専門士とは?◆
公益財団法人 不動産流通推進センター(旧 不動産流通近代化センター、retpc.jp) 認定資格。国土交通大臣の登録を受け、不動産コンサルティングを円滑に行うために必要な知識及び技能に関する試験に合格し、宅建取引士・不動産鑑定士・一級建築士の資格を有する者が「公認 不動産コンサルティングマスター」と認定され、そのなかから相続に関する専門コースを修了したものが「相続対策専門士」として認定されます。相続対策専門士は、顧客のニーズを把握し、ワンストップで解決に導くための提案を行います。なお、資格は1年ごとの更新制で、業務を通じて更新要件を満たす必要があります。
「相続対策専門士」は問題解決の窓口となり、弁護士、税理士の業務につなげていく役割であり、業法に抵触する職務を担当することはありません。
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