父親の財産・総額5億9,000万円を公正証書遺言でほとんど兄が相続してしまった、という裕子さん。裕子さんや裕子さんの母親は、本来ならもう少し多く遺産を相続する権利があったはずなのです。それを「遺留分」として8年経ったいま、兄に請求したいと考えましたが…。本記事では、遺留分を請求する権利があるケースについて、相続実務士である曽根惠子氏(株式会社夢相続代表取締役)が解説します。
想定相続分を侵害されると遺留分の請求ができる
遺留分とは、亡くなった人の兄弟姉妹以外の法定相続人に対し、最低限保障される遺産取得分です。子どもや配偶者は法定割合の半分が遺留分となり、財産を相続する権利を持っており、この権利は遺言書によっても奪うことはできません。
従って、遺言書によって長男に遺産のすべてを贈られたり、愛人に財産を残されたりした場合でも、一定の範囲の相続人は、遺留分を主張すれば必ず一定の財産を取得できます。
遺留分が認められる相続人の範囲は、つぎのようになります。
遺留分が認められる相続人
遺留分が認められるのは、以下の範囲の相続人です。
配偶者
亡くなった人の夫や妻が相続人になる場合、遺留分が認められます。
子ども、孫などの「直系卑属」
子どもや孫、ひ孫などの被相続人の直接の子孫を「直系卑属」と言い、遺留分が認められます。
親、祖父母などの「直系尊属」
親や祖父母、曾祖父母などの被相続人の直接の先祖を「直系尊属」と言い、遺留分が認められます。
遺留分が認められない相続人
被相続人の兄弟姉妹や、兄弟姉妹が先に亡くなっている場合に相続人となる甥姪には遺留分が認められません。遺留分を請求するには、複雑な計算をしたり、ほかの相続人と話し合ったりしなければなりません。相続人同士が対立していたら、なおのこと大変です。
遺留分の割合と計算方法
遺留分は「最低限度の遺産取得割合」で、法定相続分の半分となります。例えば、相続人が、亡くなった人の配偶者と子ども2人が相続人の場合、配偶者の法定相続分は「2分の1」ですので、遺留分は「4分の1」となります。
子どもの法定相続分は「2分の1」で、それをきょうだいの人数で割るので、一人あたりは「4分の1」です。遺留分はさらにその半分ですので、子ども一人の遺留分は「8分の1」となります。
株式会社夢相続代表取締役
公認不動産コンサルティングマスター
相続対策専門士
京都府立大学女子短期大学卒。PHP研究所勤務後、1987年に不動産コンサルティング会社を創業。土地活用提案、賃貸管理業務を行う中で相続対策事業を開始。2001年に相続対策の専門会社として夢相続を分社。相続実務士の創始者として1万4400件の相続相談に対処。弁護士、税理士、司法書士、不動産鑑定士など相続に関わる専門家と提携し、感情面、経済面、収益面に配慮した「オーダーメード相続」を提案、サポートしている。
著書65冊累計58万部、TV・ラジオ出演127回、新聞・雑誌掲載810回、セミナー登壇578回を数える。著書に、『図解でわかる 相続発生後でも間に合う完全節税マニュアル 改訂新版』(幻冬舎メディアコンサルティング)、『図解90分でわかる!相続実務士が解決!財産を減らさない相続対策』(クロスメディア・パブリッシング)、『図解 身内が亡くなった後の手続きがすべてわかる本 2021年版 (別冊ESSE) 』(扶桑社)など多数。
◆相続対策専門士とは?◆
公益財団法人 不動産流通推進センター(旧 不動産流通近代化センター、retpc.jp) 認定資格。国土交通大臣の登録を受け、不動産コンサルティングを円滑に行うために必要な知識及び技能に関する試験に合格し、宅建取引士・不動産鑑定士・一級建築士の資格を有する者が「公認 不動産コンサルティングマスター」と認定され、そのなかから相続に関する専門コースを修了したものが「相続対策専門士」として認定されます。相続対策専門士は、顧客のニーズを把握し、ワンストップで解決に導くための提案を行います。なお、資格は1年ごとの更新制で、業務を通じて更新要件を満たす必要があります。
「相続対策専門士」は問題解決の窓口となり、弁護士、税理士の業務につなげていく役割であり、業法に抵触する職務を担当することはありません。
著者プロフィール詳細
連載記事一覧
連載相続のプロが解説!人生100年時代「生前対策」のアドバイス事例