父親の財産は約5億9,000万円。遺言書でほとんどを兄が相続。
54歳の裕子さんが80歳の母親の遺留分を請求できるか知りたいと相談に来られました。父親は8年前に亡くなりましたが、公正証書遺言があり、それにより手続きをしました。相続人は母親と兄と裕子さんの3人です。
父親の財産は自宅、貸店舗、貸宅地、アパート、裕子さんが住む家と預金などがあり、約5億9,000万円でした。遺言書の内容は、母親には150坪ある自宅の土地、建物で約1億円、裕子さんが住む土地と建物は裕子さんにとされていて、約8,000万円。残りは全部、長男である兄にとされていました。
母親が相続したのは財産の15%。法定割合が50%、遺言書があるため遺留分は法定割合の半分、25%ですので、あと10%、5,750万円までは遺留分侵害額請求ができたということになります。
遺留分侵害額請求はしなかった
父親が亡くなったのは8年前で、亡くなった直後に兄から公正証書遺言があることを知らされました。母親も裕子さんも、両親と同居して賃貸事業などを父親の代わりに仕切ってきた兄には勝ち目がありません。
相続の手続きでも兄が仕切っていましたので、母親は半分の権利があるのに少ないなと思いながらもそのとき文句をいえる雰囲気でもなかったため、そのままにしてきたと言います。けれども最近になって遺留分の請求ができることを知って、母親の権利として、いまからなにかできる方法はないかと気になったといいます。
ちなみに裕子さんの遺留分割合は法定割合25%の半分、12.5%ですので、計算すると7,375万円。対して相続した自宅の土地・建物は8,000万円です。相続評価では遺留分は侵害していないということがわかりました。しかし、「遺留分算定」となる財産の評価は一律にいかないところがあります。
預貯金や上場株式の評価は決まっている
相続財産の評価は亡くなった日の「時価」とされています。金融資産のうち、預貯金はその日の残高となり、経過利息を加算します。定期預金も解約利息を計算して算出しますが、すべて計算でき明確です。
上場株については価格が公開されていて、国税庁のwebサイトでは次のように記載されており、計算の仕方も明確です。
「上場株式とは、金融商品取引所に上場されている株式をいいます。上場株式は、その株式が上場されている金融商品取引所が公表する課税時期(相続または遺贈の場合は被相続人の死亡の日、贈与の場合は贈与により財産を取得した日)の最終価格によって評価します。
ただし、課税時期の最終価格が、次の3つの価額のうち最も低い価額を超える場合は、その最も低い価額により評価します。
イ 課税時期の属する月の毎日の最終価格の月平均額
ロ 課税時期の属する月の前月の毎日の最終価格の月平均額
ハ 課税時期の属する月の前々月の毎日の最終価格の月平均額
なお、課税時期に最終価格がない場合やその株式に権利落などがある場合には、一定の修正をすることになっています。以上が原則ですが、負担付贈与や個人間の対価を伴う取引で取得した上場株式の価額は、その株式が上場されている金融商品取引所の公表する課税時期の最終価格によって評価します。」
よって、預貯金や株式などはだれが評価しても同じ金額になります。