悔しいです…8年前の相続で父親の財産・総額5億9,000万円はほとんど兄が独り占め。〈54歳長女〉と〈80歳母親〉が悔し涙を流したワケ【相続の専門家が解説】

悔しいです…8年前の相続で父親の財産・総額5億9,000万円はほとんど兄が独り占め。〈54歳長女〉と〈80歳母親〉が悔し涙を流したワケ【相続の専門家が解説】
(※写真はイメージです/PIXTA)

父親の財産・総額5億9,000万円を公正証書遺言でほとんど兄が相続してしまった、という裕子さん。裕子さんや裕子さんの母親は、本来ならもう少し多く遺産を相続する権利があったはずなのです。それを「遺留分」として8年経ったいま、兄に請求したいと考えましたが…。本記事では、遺留分を請求する権利があるケースについて、相続実務士である曽根惠子氏(株式会社夢相続代表取締役)が解説します。

遺留分評価は時価でもできる

預貯金や上場株などはだれが評価をしてもブレがなく、金額の違いはないのですが、「不動産」の中でも「土地」の評価の仕方にはいくつかの方法があります。土地評価の主な方法は、

 

1. 固定資産税評価額

2. 路線価

3. 地価公示価格

 

の3つになります。

 

1 固定資産税評価額とは、固定資産税の基準とされる価格です。固定資産税評価額は一般に時価よりも安く、流通価格である地価公示価格の7割程度とされています。

 

2 路線価とは、相続税・贈与税算出時の基準価格を言います。この路線価についても時価より安く、地価公示価格の8割程度と言われています。

 

3 地価公示価格とは、国土交通省が公示する価格で、市場で売買が行われる場合に、成立すると想定される価格を言います。

 

こうした価格のうち、遺留分の算定に使われるのは主に売買される「時価」の想定額で、路線価評価よりも高くなるのが一般的です。この「時価」を遺留分の算定基準とすれば、母親の遺留分の額は増えると言えます。また遺留分を満たしているとしていた裕子さんについても遺留分を請求する余地があったとも考えられるのです。

遺留分算定の基礎となる財産は時価評価を行う

このように、不動産の評価方法は複数ありますが、遺留分算定の基礎となる財産額の算出にあたっては、時価による評価をする必要があります。この点、固定資産税評価額や路線価をそのまま使ってしまうと、(特に高額な土地などの場合)不動産の評価額は時価よりも安くなりがちです。

 

そこで、遺産分割調停や遺留分調停の現場では、当事者間において、固定資産税評価額等を一定割合で割戻した額(例えば固定資産税評価額を7/10で除した額)を時価として合意をすることがあります。

 

また、同じく調停においては、これらの評価方法を使わずに、不動産業者による不動産の査定を行い、双方が査定書を証拠として提出した上で、双方の査定額の中間額を時価額とする場合もあります。

8年過ぎてからは遺留分の請求はできない

父親の財産額からすると、本来は母親には2分の1の権利があり、2億9,500万円の財産を相続しても相続税がかからない範囲です。裕子さんも1億4,750万円が法定割合の4分の1になりますので、もう少し多く相続できたといえます。

 

しかし、8年過ぎたいま、遺留分侵害額請求の時効にかかっており、もう請求できないのです。しかも、遺留分侵害額請求は本人が個々に侵害された相手に、文書で請求しなければなりません。母親も裕子さんも請求できることを知らなかったと言いますが、それでも1年以上過ぎた場合は請求できないとなります。

 

こうしたチャンスを逃さないために、遺留分侵害額請求を知識として知っておくことが必要になります。あらためて知っておきましょう。

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