ここにハンコを…生き別れの亡き父の遺産がいつの間にか見知らぬ女性の手に。〈47歳女性〉の前に突然現れた招かれざる訪問者の「まさかの正体」とは?【相続の専門家は見た!】

ここにハンコを…生き別れの亡き父の遺産がいつの間にか見知らぬ女性の手に。〈47歳女性〉の前に突然現れた招かれざる訪問者の「まさかの正体」とは?【相続の専門家は見た!】
(※写真はイメージです/PIXTA)

香さんの元にある日訪れた不動産会社と見知らぬ女性。話を聞くと「香さんの父親名義の建物を解体したいのでハンコをください」とのこと。父親は死亡、土地と建物の借用関係をめぐって香さんの知らぬところで他人に遺産を取り壊されそうになっていたのです。本記事では、使用貸借を行って所有されていた建物が、所有者の死亡によって相続人に相続されなかったケースについて、相続実務士である曽根惠子氏(株式会社夢相続代表取締役)が解説します。

突然の訪問者がハンコの押印を求めてくる

香さん(40代女性)が相談に来られました。話を聞くと、ある日香さんのもとに全く面識のない不動産会社の人と女性・山田さんが訪ねてきたと言います。香さんが戸惑いながらも事情を聞いてみたところ、2人は次のようなことを説明しました。

 

「山田さんが遺贈を受けた土地に、香さんの父親名義の建物がある。相続税を払うために土地を売却したいのだが、建物があると土地が売れないため建物を解体したい。しかし香さんの父親は亡くなっていて、建物の相続人は一人娘の香さんだけになるため、解体してもいいという書類にハンコをもらいたい。解体費はこちらで負担する」

 

困った香さんはどうすればいいかと相談に来られたのでした。

両親は離婚していて父親とは会う機会がなかった

香さんの両親は香さんが生まれて間もなく離婚。母親は香さんを連れて父親の家から出ているため、香さんには父親と暮らした記憶がありません。

 

母親の話ではそのあと養育費をもらわず、一切の交流がなかったため、父親がどんな生活をしてきたのかまったく見当がつかないといいます。

 

当然、母親も父親や父親の親族とは交流を絶っていたため、父親が亡くなったことを知らされておらず、今回、不動産会社の人と山田さんの話からようやく知ったのでした。

相続人ではない人が、公正証書遺言で遺贈を受けた

山田さんが遺贈を受けた土地は香さんの父親の妹の名義になっていたのですが、本年、父親の妹が亡くなったため、公正証書遺言で山田さんが遺贈を受けたといいます。

 

香さんの父親は母親と離婚後、再婚していなかったようで配偶者はおらず、相続人は香さんひとりでした。父親の妹も独身で、配偶者、子どもがいません。親がすでに亡くなっている場合は、相続人はきょうだいとなるため、香さんが亡くなった父親の代襲相続人となるところでした。

 

けれども、まだ母親は健在ですので、亡くなった父親の妹の相続人はその母親一人となります。

 

そのような相続を行う予定だったはずが、公正証書遺言により亡くなった妹の財産は、すべて山田さんが遺贈を受けることになったのです。

 

当社が香さんの依頼をもとに、山田さんから資料を提供してもらい確認したところ、確かにその土地はすでに名義変更登記が終わっていて、父親の妹から山田さん名義に変わっていました。

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