夫が亡くなった65歳女性、スムーズに遺産分割協議が進んだものの…法務局からの〈思わぬ差し戻し〉に驚いたワケ【相続の専門家が解説】

夫が亡くなった65歳女性、スムーズに遺産分割協議が進んだものの…法務局からの〈思わぬ差し戻し〉に驚いたワケ【相続の専門家が解説】
(※写真はイメージです/PIXTA)

実印だと思って押した印鑑が、それと似た認印で実印ではなかったために、法務局などから申請が突き返されてしまうといったケースが少なくありません。本記事では、実印の管理方法などについて、相続実務士である曽根惠子氏(株式会社夢相続代表取締役)が解説します。

そもそも印鑑登録とは?

印鑑登録(いんかんとうろく)とは、印鑑により個人や法人を証明する制度です。居住地の市区町村で登録、発行しています。印鑑登録をしたことを証するものを「印鑑登録証」と言い、印影と登録者の住所・氏名・生年月日・性別を記載したものを「印鑑登録証明書(印鑑証明)」といいます。

 

1人につき1個の印鑑(印章)しか登録できないため、変更したい場合は再度、登録し直す必要があります。

 

登録者が請求すると、各自治体の首長の証明印入りで発行されるため、本人証明書類としても有効です。

 

不動産を登記する際、遺産分割協議書には「実印」を押印しなければならないので、印鑑証明書は必須の添付書類となります。また、不動産の売却や贈与などで所有権移転登記の際にも、所有者は印鑑証明書にて本人確認をすることになるため、添付が必須です。

 

実印とする印鑑は、本人が決めたものであれば、どんな印鑑でも登録できます。

事例1 実印と似た印鑑では、登記の申請は通らない

正雄さんは15年前に父親が亡くなり、きょうだいで遺産分割協議をした結果、自宅は長男の正雄さんが相続することで合意。遺産分割協議書や戸籍関係、印鑑証明書など相続登記に必要な書類は揃えて登記するばかりになっていました。

 

ところが仕事の忙しさなどから登記申請をすることをすっかり失念してしまい、あらためて相続登記をしたいと相談に来られました。

 

登記関係の書類は1冊のファイルにまとまっており、新たに登記申請の委任状を作成するだけで、遺産分割協議書や戸籍関係、印鑑証明書などの当時の書類をそっくり使えることが判明。司法書士を通して法務局へ登記申請をしました。

 

ところが、遺産分割協議書の印と印鑑証明書の印が違うと法務局から指摘があり、登記申請が差し戻されたのです。

 

正雄さんの実印登録の印は名字だけの印鑑で、よくある認印です。似たような印鑑がいくつかあるというので持ってきてもらうと、法務局の指摘のとおり、遺産分割協議書に押した印鑑が実印ではないということが判明。押印してある印鑑の隣に正しい実印を押し直して、法務局に再申請してもらい、無事、15年前の相続登記が完了したのです。

 

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