80代半ばで一人暮らしが大変になり、高齢者住宅へ移った母の実家がしばらく空き家になっていると相談に来られた志穂さん。本記事では、その実家の対処法について、相続実務士である曽根惠子氏(株式会社夢相続代表取締役)が解説します。
一人暮らしが大変になった母の実家が、しばらく空き家に
志穂さん(55歳女性)が母親の家のことで相談に来られました。
母親は、父親が亡くなってから一人暮らし。子どもは長女の志穂さんと妹ですが、二人とも嫁いで、実家を離れています。母親は80代半ばで、一人暮らしが大変になってしまい、現在は高齢者住宅に住み替え、不安がなくなったと言います。
しかし、そうしたことで、しばらく母親の住まいが空き家になっていました。荷物は置いたままではありますが、高齢者住宅から戻って一人暮らしができるとは思えず、いよいよ母親の家をどうすればいいかということで、相談に来られたのです。
自宅は売るなら、高齢者住宅に移ってから「3年以内に」売るべき!?
志穂さんも、妹も、近隣に嫁いで、自分たちの家があります。相続になってからでも、実家に戻って住むという選択肢はないといいます。母親も、家は住まないのであれば、売って二人で分ければいいと言ってくれています。
すでに空き家になって1年ほどになるという志穂さんの話を聞いて、売却するなら高齢者住宅に移ってから「3年以内に」という説明をしました。その期間であれば、居住用財産の3,000万円控除が使えるからです。
居住用財産の3,000万円控除とは、自宅を売却する際に譲渡益の3,000万円を控除してもらえるという特例で、約600万円の譲渡税の負担を減らせるものです。この期限を意識することで手元に残せる現金が変わってきます。
こうした背景からも、自宅を売却するなら母親の意思確認ができるうちに、母親が契約して売却してしまうことが得策なのです。志穂さんは、母親と妹にも説明して、母親に売却の決断をしてもらうと言って帰っていきました。
株式会社夢相続代表取締役
公認不動産コンサルティングマスター
相続対策専門士
京都府立大学女子短期大学卒。PHP研究所勤務後、1987年に不動産コンサルティング会社を創業。土地活用提案、賃貸管理業務を行う中で相続対策事業を開始。2001年に相続対策の専門会社として夢相続を分社。相続実務士の創始者として1万4400件の相続相談に対処。弁護士、税理士、司法書士、不動産鑑定士など相続に関わる専門家と提携し、感情面、経済面、収益面に配慮した「オーダーメード相続」を提案、サポートしている。
著書65冊累計58万部、TV・ラジオ出演127回、新聞・雑誌掲載810回、セミナー登壇578回を数える。著書に、『図解でわかる 相続発生後でも間に合う完全節税マニュアル 改訂新版』(幻冬舎メディアコンサルティング)、『図解90分でわかる!相続実務士が解決!財産を減らさない相続対策』(クロスメディア・パブリッシング)、『図解 身内が亡くなった後の手続きがすべてわかる本 2021年版 (別冊ESSE) 』(扶桑社)など多数。
◆相続対策専門士とは?◆
公益財団法人 不動産流通推進センター(旧 不動産流通近代化センター、retpc.jp) 認定資格。国土交通大臣の登録を受け、不動産コンサルティングを円滑に行うために必要な知識及び技能に関する試験に合格し、宅建取引士・不動産鑑定士・一級建築士の資格を有する者が「公認 不動産コンサルティングマスター」と認定され、そのなかから相続に関する専門コースを修了したものが「相続対策専門士」として認定されます。相続対策専門士は、顧客のニーズを把握し、ワンストップで解決に導くための提案を行います。なお、資格は1年ごとの更新制で、業務を通じて更新要件を満たす必要があります。
「相続対策専門士」は問題解決の窓口となり、弁護士、税理士の業務につなげていく役割であり、業法に抵触する職務を担当することはありません。
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