母親と同居していた圭さん(55歳)は、母の死後、実家の相続で思わぬ壁にぶつかりました。自宅が「共有名義」だったことで、手続きが複雑になり、贈与税の問題まで発生したのです。最近は、かつて相続税と無縁だった家庭でも、制度改正や不動産評価額の上昇で申告が必要になることがあります。こうした事態をどう乗り越えるべきか? 相続実務士の曽根惠子氏(株式会社夢相続代表取締役)が解説します。
実家が共有になっている
圭さん(55歳男性)が相談に来られました。同居する母親(90代)が亡くなったので手続きをお願いしたいということです。
父親は30年前に亡くなっていて、そのときに依頼した税理士のアドバイスで、自宅は相続人が法定割合で登記をしたといいます。母親が2分の1、姉(60代)が4分の1、圭さんが4分の1です。
父親が亡くなった当時は相続税の基礎控除が8,000万円あり、自宅と預金だけの父親の財産では相続税はかからず、申告も不要でした。
相続税の申告が必要 基礎控除が下がった+評価が上がった
父親の相続のときは相続税の申告も、納税も不要だったのですが、今回は当時とは状況が違っています。
まず、相続税の基礎控除が下がりました。相続税の基礎控除が改正前であれば2人で7,000万円だったところが、改正後は4,200万円になったのです。
次に土地の評価が上がりました。父親が亡くなった頃はバブル経済が崩壊して土地の評価が大きく下がった時期でしたので、自宅の土地も3,000万円程だったのですが、現在では倍の6,000万円ほどになっています。
同居していると小規模宅地等の特例が適用できる
母親の土地の持ち分が3,000万円、建物250万円、預金2,000万円を合わせると5,250万円となり、基礎控除を超えてしまうため、相続税の申告が必要ですが、圭さんが同居しており、土地の評価を8割減できます。
基礎控除を超える段階で相続税の申告は必要ですが、圭さんが自宅を相続し、小規模宅地等の特例を適用することで、結果的に相続税の納税は不要となりました。姉は、「自分は預金の半分でいい、自宅は圭さんが相続すればいい」といってくれましたので、そのような遺産分割協議書を作成して申告をしています。
自宅土地は共有のまま
母親の相続税の申告の次は、不動産の名義替えをしました。遺産分割協議書により、法務局で相続登記をして、母親の名義は圭さんに相続されています。
結果的に自宅の土地は圭さんが母親の2分の1を相続、父親のときに相続した4分の1を足して4分の3となりました。残る4分の1は父親の相続時に姉が取得したままです。
母親の相続手続きは終わりましたが、姉から自分は自宅に戻って住むということはないので、圭さんの名義にしていいと言われたのです。
そこで圭さんからどういう手続きが必要だろうかと相談がありましたので、方法を検討してみました。
株式会社夢相続代表取締役
公認不動産コンサルティングマスター
相続対策専門士
相続実務士®
株式会社夢相続 代表取締役
一般社団法人相続実務協会 代表理事
一般社団法人首都圏不動産共創協会 理事
一般社団法人不動産女性塾 理事
京都府立大学女子短期大学卒。PHP研究所勤務後、1987年に不動産コンサルティング会社を創業。土地活用提案、賃貸管理業務を行う中で相続対策事業を開始。2001年に相続対策の専門会社として夢相続を分社。相続実務士の創始者として1万4400件の相続相談に対処。弁護士、税理士、司法書士、不動産鑑定士など相続に関わる専門家と提携し、感情面、経済面、収益面に配慮した「オーダーメード相続」を提案、サポートしている。
著書86冊累計81万部、TV・ラジオ出演358回、新聞・雑誌掲載1092回、セミナー登壇677回を数える。著書に、『図解でわかる 相続発生後でも間に合う完全節税マニュアル 改訂新版』(幻冬舎メディアコンサルティング)、『図解90分でわかる!相続実務士が解決!財産を減らさない相続対策』(クロスメディア・パブリッシング)、『図解 身内が亡くなった後の手続きがすべてわかる本 2025年版 』(扶桑社)など多数。
◆相続対策専門士とは?◆
公益財団法人 不動産流通推進センター(旧 不動産流通近代化センター、retpc.jp) 認定資格。国土交通大臣の登録を受け、不動産コンサルティングを円滑に行うために必要な知識及び技能に関する試験に合格し、宅建取引士・不動産鑑定士・一級建築士の資格を有する者が「公認 不動産コンサルティングマスター」と認定され、そのなかから相続に関する専門コースを修了したものが「相続対策専門士」として認定されます。相続対策専門士は、顧客のニーズを把握し、ワンストップで解決に導くための提案を行います。なお、資格は1年ごとの更新制で、業務を通じて更新要件を満たす必要があります。
「相続対策専門士」は問題解決の窓口となり、弁護士、税理士の業務につなげていく役割であり、業法に抵触する職務を担当することはありません。
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