母親が亡くなっておよそ8カ月後に税務署から「相続税申告のご案内」という封書が届いた久美子さん(50代女性)。以前父が亡くなったときと同様に税務署には何もしなくていいと思っていた久美子さんは驚いて、弟と二人で相談に来ました。早速財産評価をしてみると、基礎控除額ぎりぎり。税務署への申告の仕方に悩む久美子さん……。本記事では、税務署から送られてくる「相続税申告のご案内」の対応方法について、相続実務士である曽根惠子氏(株式会社夢相続代表取締役)が解説します。
税務署からのご案内通知はいつ頃届いて、どういう内容?
「相続税についてのご案内」は、相続発生からおよそ6~8か月後に送られてくる
「相続税についてのお尋ね」は、相続発生後6~8か月を過ぎた頃に税務署から封書で送られてきます。
封筒の中には「相続税の申告要否検討表」という用紙が入っていて、これに必要事項を書いて税務署に返送します。場合によっては「相続税の確定申告書」が入っていることもあります。
久美子さんの場合は、「相続税の確定申告書」の用紙が入っていました。
「相続についてのご案内」はなぜ送られてくる?
税務署から送られる「相続税についてのご案内」は、亡くなった人の財産の内容を確認し、相続税の申告を促す目的があるとされています。
人が亡くなったときは市区町村役場に死亡届を提出しますので、この情報は税務署にも通知されます。(相続税法58条)。よって税務署は、この情報をもとに、亡くなった人について過去の確定申告書や固定資産課税台帳、さらに保険会社から提出される保険金の支払調書などから財産がどれぐらいあるかを調べます。
その結果、亡くなった人全員に通知を出すのではなく、一定以上の財産があると見込まれる場合に「ご案内」が送られます。
過去に確定申告をしていた場合、通知が送られてくることが多い
一定の収入があり、毎年の確定申告をしているような場合には、税務署も不動産や金融資産などの財産の内容を把握していることから、相続税がかかる財産だと認識していることがあります。
久美子さんの母親は、父親から財産を相続しており、毎年の確定申告をしていた経緯がありました。父親の財産は自宅と預金で基礎控除の範囲内ではありましたが、父親が自営業で確定申告をしてきていました。自宅の1階の半分で加工業を営んでいたのです。父親が亡くなった後は廃業しましたが、そのあとを貸工場として、賃貸しており、母親は家賃収入を得て生活していました。よって母親もずっと確定申告をしてきたということです。
株式会社夢相続代表取締役
公認不動産コンサルティングマスター
相続対策専門士
京都府立大学女子短期大学卒。PHP研究所勤務後、1987年に不動産コンサルティング会社を創業。土地活用提案、賃貸管理業務を行う中で相続対策事業を開始。2001年に相続対策の専門会社として夢相続を分社。相続実務士の創始者として1万4400件の相続相談に対処。弁護士、税理士、司法書士、不動産鑑定士など相続に関わる専門家と提携し、感情面、経済面、収益面に配慮した「オーダーメード相続」を提案、サポートしている。
著書65冊累計58万部、TV・ラジオ出演127回、新聞・雑誌掲載810回、セミナー登壇578回を数える。著書に、『図解でわかる 相続発生後でも間に合う完全節税マニュアル 改訂新版』(幻冬舎メディアコンサルティング)、『図解90分でわかる!相続実務士が解決!財産を減らさない相続対策』(クロスメディア・パブリッシング)、『図解 身内が亡くなった後の手続きがすべてわかる本 2021年版 (別冊ESSE) 』(扶桑社)など多数。
◆相続対策専門士とは?◆
公益財団法人 不動産流通推進センター(旧 不動産流通近代化センター、retpc.jp) 認定資格。国土交通大臣の登録を受け、不動産コンサルティングを円滑に行うために必要な知識及び技能に関する試験に合格し、宅建取引士・不動産鑑定士・一級建築士の資格を有する者が「公認 不動産コンサルティングマスター」と認定され、そのなかから相続に関する専門コースを修了したものが「相続対策専門士」として認定されます。相続対策専門士は、顧客のニーズを把握し、ワンストップで解決に導くための提案を行います。なお、資格は1年ごとの更新制で、業務を通じて更新要件を満たす必要があります。
「相続対策専門士」は問題解決の窓口となり、弁護士、税理士の業務につなげていく役割であり、業法に抵触する職務を担当することはありません。
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