英国の相続税は超富裕層にやさしい!相続が起きても財産がなくならない英国貴族4家と、エリザベス皇太后の莫大な財産がひ孫たちに非課税で相続できたワケ

英国の相続税は超富裕層にやさしい!相続が起きても財産がなくならない英国貴族4家と、エリザベス皇太后の莫大な財産がひ孫たちに非課税で相続できたワケ
(※写真はイメージです/PIXTA)

日本では三代にわたって相続が続くと、財産がなくなるとよくいわれます。ですが英国では、三代連続で相続が発生しても莫大な土地を所有している超富裕層がいます。またウィリアム皇太子とヘンリー王子は、エリザべス女王の母で曽祖母にあたるエリザべス皇太后から1,900万ポンド(約36億円)を非課税で相続することができました。それはなぜなのでしょうか。本連載では、富裕層の国際相続の諸課題について解説します。

信託を利用した約36億円が非課税に

以下は、英国王室関連の相続に関係するトピックスです。

 

①エリザベス女王の母であるエリザベス皇太后は、2002年3月30日に101歳で逝去しました。皇太后は崩御の8年前に自身のひ孫(ウィリアム皇太子とヘンリー王子)のために財産の約3分の2(推定1,900万ポンド)を信託に拠出しました。

 

②2022年9月8日のエリザベス女王の逝去に伴い女王の私有財産は相続されることになりました。

 

イギリス王室の公邸である石造りのウィンザー城(※写真はイメージです/PIXTA)

皇族への特例がなく信託を利用した英国王室

注目したいのは、皇太后が生前にひ孫たちのために信託を設定したことです。皇太后はウィリアム皇太子とヘンリー王子にそれぞれ、21歳と40歳の誕生日に分割して受け取れるようにしたとされています。

 

英国の相続税は皇族に対する特例措置は特にありません。英国の信託課税では、生前の資産の移転については「即時課税」(immediately chargeable)と潜在的免税贈与である「PETs」(potentially exempt transfers)に区分されています。

 

即時課税は移転時の贈与者の過去7年間の累積額に算入して計算します。一方PETsは贈与者が移転の時点より7年以内に死亡した場合にのみ課税されます。PETsに該当するか否かの要件は、贈与者が個人であること、受贈者が個人であることまたは特定の信託であることです。

 

皇太后は崩御する8年前に信託を設定しているとのことから、相続税が控除されたと推認できます。

 

英国の相続税の適用税率は40%であり、基礎控除額は32万5,000ポンドです。生前の資産の移転で即時課税に対する適用税率は20%です。またPETsに係る税率は、7年を超えた場合は課税資産に加算されません。

 

皇太后は1994年頃に信託を設定しています。したがって、2006年の信託法改正以前にすでに信託をしていたことになります。委託者が生存中に設定され、現に共有しうる権利を取得する信託の多くはPETsとして取り扱われ、信託設定時には相続税は課されません。

 

皇太后は、女王の母という特権を行使していません。皇太后の側近に税制に精通した者がいて、英国の相続税制と信託税制を巧みに利用するプランを考案して、ひ孫の2人に財産を相続しました。その結果、ウィリアム皇太子とヘンリー王子に合わせて約36億円もの財産が非課税で相続されることになったのです。

 

矢内一好

国際課税研究所首席研究員

 

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