「叱るのが怖い」リーダーへ…パワハラ扱いを回避し、部下を的確に育てる“効果的な叱り方”【アンガーマネジメントのプロが解説】

「叱るのが怖い」リーダーへ…パワハラ扱いを回避し、部下を的確に育てる“効果的な叱り方”【アンガーマネジメントのプロが解説】
画像:PIXTA

「叱る」という行為は、昨今はパワハラを恐れるあまり、しばしば避けられがちですが、部下や後輩の成長にとって欠かせない要素である、と研修講師として25万人以上にアンガーマネジメントを指導してきた戸田久実氏は話します。本連載では、戸田氏の著書『アンガーマネジメント大全』(日経ビジネス人文庫)より、パワハラ問題を避けながら、部下や後輩に「こうしてほしい」と効果的に伝えるための適切な「叱り方」について、一部抜粋・編集して紹介します。

「叱ること」は決して悪いことではない

Q:パワハラと言われるのが怖くて部下を怒れません

A:「叱る」のではなく「リクエスト」しよう

 

本来「叱る」とは相手の行動や意識の改善を促すための行為であり、悪いことではありません。伝えるときは、どう行動してほしいのかを相手に「リクエスト」しましょう。

 

 

最近は、「叱るのはよくないことだ」「部下から『パワハラだ』と言われるのが怖くてうまく叱ることができない」という話をよく耳にします。

 

管理職の人自身が部下だった頃は、上司が「バカヤロウ」「ふざけるな」と、かなり強い口調で感情的に怒鳴ることもよくありました。そのような叱られ方しか知らないため、叱ることに対するイメージが、本来の「叱る」と異なっている人も多いのです。その叱り方しか見ていないため、叱り方もわからないのでしょう。

 

昨今は、「ほめて育てろ」という風潮もあるので、叱ること自体がよくないという認識を持っている人も多くいます。でも、部下や後輩、子どもに対して叱る目的は「次からこうしてほしい」という、行動や意識の改善を促すことなので、決して悪いことではありません。相手の成長のためにも、改善してもらう必要がある場合、よくないことや迷惑をかけることをしてしまった場合には、「叱る」ようにしましょう。

 

叱るときは「次からこうしてほしい」「ここを直してほしい」という要望を伝える、言い換えれば「リクエストをする」ことだと、とらえ方を変えてみてください。そうすることで、叱ることへの抵抗も少なくなるでしょう。

叱るときは「してほしいこと」と「理由」を伝える

ただ、叱るときは怒りという感情がともないやすいため、ついイラッとしてやり込めたり、叩きのめしたり、自分の正論を押し通す方向に行かないようにしましょう。パワハラ問題になる可能性があります。

 

叱るときの伝え方

 

 

×「なんで作業手順を守らないんだよ。この通りにやらないなんてバカだな」

◯「チームで決めた通りの手順を守ってほしい。そうしないと事故が起こるからね」

 

×「同じミスを何度も繰り返すなんてバカじゃないか。本当に抜けているよな」

○「同じミスを繰り返さないように、ここは数字の間違いはないか、見直しをして仕上げてほしい。数字ひとつの間違いでも、このままお客様に提出したら、相手に不信感を与えてしまうよ」

 

このように、どう行動してほしいのか、なぜこれを改善してほしいのかという理由をセットにして相手に伝えましょう。

 

リクエストに該当しない、「バカじゃないか」「使えないな」「この仕事は向いていない」「ダメな人間だ」といった、相手の人格や能力を否定する言葉が入ってしまうと、パワハラにあたります。この点に気をつけて、伝えるようにしてください。

 

 

戸田 久実

アドット・コミュニケーション株式会社代表取締役

一般社団法人日本アンガーマネジメント協会代表理事

 

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