「90歳の父親が亡くなる前に」と生前相続の相談に来られた50代の誠(まこと)さん。この歳になって初めて、自分たち兄弟が父親の再婚後の子であり、前妻との子どもの存在を知って困惑していました。相続実務士である曽根惠子氏(株式会社夢相続代表取締役)に寄せられた相談を元に生前相続についてみていきましょう。
解決策は「公正証書遺言を作る」しかない
父親は先妻とは没交渉。存在も忘れているようで危機感がありません。しかし、誠さんと弟にとっては会ったこともない異母兄弟がいるというだけで大問題。父親が亡くなった後に兄弟を探し出し、遺産分割協議に協力してもらえるようお願いをすること自体がストレスです。
そんな経緯で、誠さんが相談に来られたのでした。
こうしたときに必須となるのは遺言書です。夢相続では公正証書遺言の証人業務を受けていて、遺言書作りのサポートをしています。誠さんにご提案すると、その場で即決され、父親を説得するのでお願いしたいと帰られました。
公正証書遺言に必要な書類
公正証書遺言に必要な書類は下記のとおり。
1.遺言者の印鑑証明書(3ケ月以内)
2.戸籍謄本…遺言者と、相続人3人の関係が記載されているもの
3.不動産の固定資産税納付書※手元にない場合、固定資産税評価証明書を役所で取得
4.金融資産の概算と金融機関名のメモ
5.遺言の内容の原稿
公証人、証人が出張できる
誠さんの父親は普段ひとり暮らしをしていて、デイサービスに出かけるなど日常生活に支障はなく、意思確認も問題ありません。
しかし電車に乗り、公証役場に出かけるとなると一人では不安があることと、誠さんが付き添いで行くにしても公証役場が稼働している平日にはなかなか時間が取れないといいます。
そこで、誠さんのクリニックのお昼休みに遺言書作成ができるように、公証人と証人が父親のご自宅に出向いて作成できるよう段取りしました。
高齢や体調により外出が難しい人でも、出張サービスを利用することで遺言書を作ることができます。多少の出張費がかかりますが、それでも作れる安心感はあります。
株式会社夢相続代表取締役
公認不動産コンサルティングマスター
相続対策専門士
京都府立大学女子短期大学卒。PHP研究所勤務後、1987年に不動産コンサルティング会社を創業。土地活用提案、賃貸管理業務を行う中で相続対策事業を開始。2001年に相続対策の専門会社として夢相続を分社。相続実務士の創始者として1万4400件の相続相談に対処。弁護士、税理士、司法書士、不動産鑑定士など相続に関わる専門家と提携し、感情面、経済面、収益面に配慮した「オーダーメード相続」を提案、サポートしている。
著書65冊累計58万部、TV・ラジオ出演127回、新聞・雑誌掲載810回、セミナー登壇578回を数える。著書に、『図解でわかる 相続発生後でも間に合う完全節税マニュアル 改訂新版』(幻冬舎メディアコンサルティング)、『図解90分でわかる!相続実務士が解決!財産を減らさない相続対策』(クロスメディア・パブリッシング)、『図解 身内が亡くなった後の手続きがすべてわかる本 2021年版 (別冊ESSE) 』(扶桑社)など多数。
◆相続対策専門士とは?◆
公益財団法人 不動産流通推進センター(旧 不動産流通近代化センター、retpc.jp) 認定資格。国土交通大臣の登録を受け、不動産コンサルティングを円滑に行うために必要な知識及び技能に関する試験に合格し、宅建取引士・不動産鑑定士・一級建築士の資格を有する者が「公認 不動産コンサルティングマスター」と認定され、そのなかから相続に関する専門コースを修了したものが「相続対策専門士」として認定されます。相続対策専門士は、顧客のニーズを把握し、ワンストップで解決に導くための提案を行います。なお、資格は1年ごとの更新制で、業務を通じて更新要件を満たす必要があります。
「相続対策専門士」は問題解決の窓口となり、弁護士、税理士の業務につなげていく役割であり、業法に抵触する職務を担当することはありません。
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